画像診断ガイドライン-2003
画像診断の進め方に関する放射線科専門医による提言・勧告

出版にあたって

         日本放射線科専門医会・医会ガイドライン担当理事
                  産業医科大学 放射線科学教室
                           興梠征典

 本ガイドラインは放射線科専門医会・医会と日本医学放射線学会の共同事業として完成した。専門医会・医会の約50名からなる 9 つのワーキンググループがガイドライン原案を作成し,それに対し日本医学放射線学会から委嘱された評価委員が様々な意見を出し,その上で最終的な訂正を行ったものである。目的は,「現時点においてもっとも合理的と思われる画像診断の適応や適応順序を明確にし,放射線科医の日常業務の指針とし,日常業務を支援する。このため 2 〜 3 年ごとに定期的改定・見直しを行う。上記を通して,医療被曝の低減,医療レベルの地域差の解消と医療の質の確保を目指し,国民の福祉に寄与する」ことである。
 このガイドラインは,一般的な総合病院で働く放射線科医を対象としている。執筆者にお願いしたのは,当該領域を専門としない放射線科医の日常診療において役に立つ,病院によって異なる条件を考慮し普遍的な内容にする,明らかに不必要な検査・不合理な適応は明確に述べる,「最低限これだけは必要である」ことを明示する,などである。専門家として執筆者が理想的と考えていることを積極的に記載した部分もある。本邦において,画像診断のあり方・進め方について専門家としての放射線科医の意見が広く取り入れられているとは言えず,その活動を広く知らしめること,業務内容や診断レベルを標準化することも重要な目的である。
 他の領域ではエビデンスに基づくガイドライン開発が精力的に行われている。厚生労働省の診療ガイドライン作成のための指針では,EBMの手法に厳密に基づくのが望ましいと述べており,またJAMAやAgreeなどの診療ガイドライン評価基準も存在する。一方では,いまだエビデンスのない診療行為やテーマも多く,専門家の主観的判断を組み入れざるを得ない場合がある。特に診断領域においては,アウトカム評価が極めて難しい,特異度や感度は検索可能だがどのような検査の組み合わせが有効かについてのエビデンスを探すのが難しい,などの困難性がある。本ガイドラインは,現時点では上記の指針・基準を充分満たしているとは言えないため,「画像診断の進め方に関する専門医による提言・勧告」というサブタイトルを付けた。今後はエビデンスに基づくガイドラインに順次変更し,治療後のアウトカムも含めて幅広く患者のアウトカムを改善するのに最も効率的な画像診断の適応・方法を明らかにしていくことが重要と考えている。
 なお,現時点では必ずしも書き方が統一されておらず,記載内容にも執筆者間で差があり,2 〜 3 年後をめどに修正や追加を行う予定になっている。医療訴訟や保険診療において診療ガイドラインの記載が不利に働く可能性が指摘されるが,ガイドラインはあくまで診療を支援するためのものであり診療を拘束するものではない。実際に臨床の現場でどのように用いるかは,医師の専門的知識と経験をもとにした判断が要求される場合も多いことを最後に付け加えたい。



発行に寄せて

             日本医学放射線学会 教育委員会担当理事
                           松井 修

 各種画像診断法の進歩は医療に多大な進歩・利益をもたらしている。しかしながら,依然として機器,造影剤や画像診断手技の進歩は進行中である。最新の機器を用いての精密な診断は臨床現場が最も望むところであり,多くの研究がなされ報告されてきた。しかしながら最先端の機器や技術は普遍的に第一線病院で施行できるものではないし,その費用対効果も一般的には受け入れがたいものも多い。Evidence based medicine(EBM)の重要性が叫ばれる中で,様々な画像診断機器を用いての,様々な画像診断手技やその有用性の研究発表は,一般の第一線医療の中でむしろ混乱の原因となっている感も否めない。一般的な画像診断機器を用いたコンセンサスのある画像診断手技とその適応のガイドラインは第一線診療に携わる放射線科医にとって最も望まれるものの一つであろう。
 放射線科専門医会・医会会員からこうしたガイドライン作成の声が挙がったのも当然と言えるが,日進月歩のなかで本格的に取り組むには大変なエネルギーが必要である。これまでも,日本医学放射線学会や専門医会で検討されたことはあるものの日の目を見なかったのはこうした理由によるものと思われる。今回,興梠先生を中心とした放射線科専門医会がこの仕事を立派に成し遂げられた。心から敬意を表するとともに感謝したい。ガイドラインがさらに客観性をますために,日本医学放射線学会教育委員会が中心となって原稿の点検・推敲を行った。協力頂いた諸先生にも感謝の意を表したい。
 診療行為にも厳密なEBMの導入が要求されているが,しかしながら依然として明確に科学的にその有効性が証明されていないものも少なくはない。今回のガイドラインの中にも多分に主観的あるいは科学的根拠に欠ける記載が少なからず存在するであろう。興梠先生の序文でも述べられているように,あくまでも“現時点”での最大公約数的なコンセンサスであることを理解して頂きたい。本ガイドラインは今後定期的に改訂されることが前提となっており,また各施設における診療行為を限定するものではない。あくまでも“画像診断の進め方に関する専門医による提言・勧告”であることを理解し利用していただければと思う。


執筆者一覧
ガイドライン評価委員一覧
ガイドライン総目次


ガイドラインのページへ戻る