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放射線科の紹介

RADIOLAGY DOCTOR

放射線科の紹介

IVRのご紹介

Interventional Radiology (IVR)とは、画像診断(X線透視装置、超音波、CTなど)を施行しながら、主にカテーテル操作または経皮的穿刺術を利用した治療のことです。「カテーテル治療」や「血管内治療」とも呼ばれてきましたが、日本IVR学会では「画像下治療」と呼ぶことを提唱しています。
体内の状態を画像でリアルタイムに観察しながら、針やカテーテルを血管や胆管・消化管などの臓器にすすめ,そこで病変部の治療を行います。穿刺する、詰める、拡げるといった手技が基本となっています。

図1 血管撮影中の様子

図1.  血管撮影中の様子 A. 血管の穿刺 B. X線透視画像によるカテーテルの誘導

IVRの種類

対象疾患は、以下に示すように血管造影手技に基づく血管系IVRと、それ以外の非血管系IVRに分けることができます。

血管系 IVR

  1. 血管塞栓術(救急止血術、動脈瘤など血管病変に対する塞栓術、腫瘍の塞栓術など)
  2. 血流改善(血管形成術、血栓溶解療法、血管内ステント留置術など)
  3. 動注化学療法(肝癌、婦人科癌、乳癌、頭頚部癌などへの動注、皮下埋め込み式リザーバー治療など)
  4. 大動脈ステントグラフト留置(大動脈瘤の治療)
  5. 中心静脈ポート留置

図2 内臓動脈瘤塞栓術(膵十二指腸動脈瘤)

図2. 内臓動脈瘤塞栓術(膵十二指腸動脈瘤) A. 下膵十二指腸動脈造影 B、C. コイル塞栓術後

非血管系 IVR

  1. 各種ドレナージ術(膿瘍、閉塞性黄疸など)
  2. 組織生検(CTガイド下肺生検など)
  3. 経皮的ラジオ波凝固療法(肝細胞癌など)
  4. 経皮的エタノール注入療法(肝細胞癌、巨大肝嚢胞など)
  5. 経皮的凍結療法(腎癌など)
  6. 経皮的椎体形成術(圧迫骨折に対する骨セメント注入療法)

図3 CTガイド下膿瘍ドレナージ(消化管、腎等に囲まれた後腹膜膿瘍)

図3. CTガイド下膿瘍ドレナージ(消化管、腎等に囲まれた後腹膜膿瘍)
A. 穿刺計画 B. 穿刺針のCT透視画像 C. ドレナージチューブ留置後

IVRの利点、問題点

全身麻酔を必要とする外科手術に対し、局所麻酔下で行われるIVRの利点には、様々な利点があります。

  1. 低侵襲である。
    大きく体を切開することなく、患者さんにとって優しい治療です。全身状態が悪い患者さんや、繰り返して治療する必要のある患者さんに施行することが可能です。治療後の患者さんの体力の消耗が比較的軽いことが多く、入院期間の短縮に効果を上げることができます。
  2. 正確である。
    高い解像度の画像を用いて、ピンポイントで治療をすることが可能です。
  3. 緊急対応が可能である。
    緊急止血に際しては、表在の動脈を穿刺して、カテーテルを挿入し、そのまま塞栓物質を用いた塞栓術を施行できます。手技の迅速性は大きな利点です。
  4. 技術の進歩が著しい。
    科学技術の進歩に伴い、より高精度の画像、手技に適した器具が開発され、さらに進んだ治療へ進化しています。

IVRの問題点も少なからずあります。

  1. 国民の認知度が低い。
  2. 治療した病変が体内に残るため病変が再発する可能性がある。
  3. 多くの治療でエビデンスが不十分である。
  4. 保険に収載されていない器具、治療がある。

IVRの手技は変遷しており、より治療効果と安全性の高い治療法が日進月歩で開発されています。国民の皆さんに認知される治療法として、学会、医会・専門医会としても努力していきます。

IVR医とは

IVR医はIVRを行う医師のことですが、専門医資格としては日本IVR学会が認定するIVR専門医の制度があります。IVR専門医になるには原則として「IVRに関連する学会の専門医に相当する資格」が必要で、主に「放射線診断専門医」であり、現在IVRは放射線科医が中心になって行っています。放射線科医は画像をもとに診断し治療する仕事をしています。放射線科医が長年培ってきた能力・技術が、この新しい治療法に生かされています。

IVR医としてのやりがいは、やはり患者さんに直接貢献できることによる達成感があります。この点で外科的手術や内視鏡下手術とならぶ治療です。救急IVRは時に患者さんを救命できる唯一の手段となり、IVR医が最後の砦となって病院全体に安心感をもたらすこともできます。

文責 聖マリアンナ医科大学放射線医学講座 三村秀文