二次試験問題解答および注釈【診断・核医学】52.〜75.

52.
画像所見:
左腎中部腹側に腎外へ突出する類円形腫瘤を認める。辺縁部にbeak signがみられ腎実質から外向性に発育した病変であることがわかる。単純CTで低吸収を呈し,造影CT(排泄相)では内部に明かな増強効果はみられない。嚢胞性病変と考えられるが,隔壁構造や壁在結節はみられない。一部で壁が厚く見えるが圧排,伸展された腎実質の可能性が高い。この病変の背側の腎実質内にも小さな病変が疑われる。こちらは単純CTでは比較的明瞭な低吸収を呈しているが,造影CTではごく淡い低吸収を呈し,検出が困難となっている。したがって,こちらは増強効果のある病変と思われる。
診断プロセス:画像中に2つの病変があり,どちらについての診断を要求されているのか悩ましい。大きい方の病変については隔壁構造や壁在結節がないことから単純性嚢胞と考えられる。小さな病変については増強効果のある腫瘍性病変とすれば,選択肢の中からは腎細胞癌しか残らない。ただし,腎細胞癌においても造影後(排泄相)に明瞭化するものがほとんどで,この症例のように不明瞭化するものはきわめて特殊と思われる。
解答:e.(a.も間違いなく存在する。臨床的により重要なものを一応の正解とした。)
コメント:選択肢はどう見ても腎嚢胞性腫瘤性病変の鑑別である。そうなると大きい病変の方に目が向いてしまう。素直な人,小さい病変に気付かなかった人は腎嚢胞を選択したのではなかろうか。しかし,放射線科専門医認定二次試験にまさか腎嚢胞なんて出題される筈がないと考えた人は,後方の小さい病変に目が向かれたかと思う。確かに臨床の現場においては,この小さな病変の方が問題とされるべきである。ただし,前述のようにこちらも典型的ではなく,知識のある人ほど悩まれたことと思う。二つの異なった性質の病変が存在して,択一での解答を要求されるのは受験された方々には気の毒である。正直,出題者の意図が見えないので,私の模範解答が実際の試験の正解かどうか疑問である。尚,来るべき専門医試験に向けて学習されている若いドクターの為に書き添えておくが,もし,超音波で問題となった病変が腎嚢胞であれば,超音波のみで嚢胞の最終診断が欲しい。また,充実性腫瘍や隔壁のある嚢胞性病変を疑った場合は造影早期相での撮像まで加えるべきである。

53.
画像所見:
両腎は腫大し,多数の嚢胞で置換されている。一部にT1強調画像で高信号のものや,T2強調画像で低信号のものもみられ,嚢胞内出血が示唆される。明らかな充実性腫瘤はみられない。
診断プロセス:多嚢胞腎の鑑別で,頻度の高いものとしては,常染色体性優性多嚢胞腎(成人型嚢胞腎)と長期透析患者に発生する後天性嚢胞腎が挙げられる。どちらも嚢胞内出血を生じやすく,その推定にはMRIが役立つ。腎の腫大が著明でない場合は後者を疑うが,出題症例のように腎の腫大が著明な場合は両者の鑑別は困難である。ここでは長期透析の病歴から素直に後天性嚢胞腎と考えて,正解を選ぶことにする。常染色体性優性多嚢胞腎も最終的には腎機能が廃絶することが少なくないので,その可能性を完全には否定できないが,一般的には腹部全体を占めるほど巨大になるまで,腎機能が比較的保たれることが多い。
その他,両腎多発嚢胞を来しうる疾患として,Von Hippel-Lindau病や結節性硬化症も挙げられる。
腎の後天性嚢胞は透析導入後3年を経た頃から出現し,経時的に増加,増大し,著明に萎縮していた腎臓が,腫大を来すようになる。嚢胞壁は通常,一層の円柱あるいは立方上皮からなるが,時に重層化して過形成性変化を来し,さらに腫瘍化すれば腎細胞癌が発生する。壁は脆弱でしばしば嚢胞内出血を伴い,大量の後腹膜出血を来すこともある。嚢胞内出血のため,嚢胞内容は単純CTで高吸収を呈したり,T1強調画像で高信号を示すので,造影前には出血性嚢胞と充実性腫瘍の鑑別が困難なこともあり,腎細胞癌の検出には造影検査までおこなうことが望ましい。以上より,後天性嚢胞腎の病態として合致しないのはbと考えられる。肝の多発嚢胞は常染色体性優性多嚢胞腎ではほぼ必発,膵の多発嚢胞は Von Hippel-Lindau病の特徴である。
解答:b
コメント:
ガドリニウム製剤の添付文書には重篤な腎障害のある患者は原則禁忌(“禁忌”ではない,曖昧な表現だが)とされている。ただし,その理由として腎機能低下患者では腎不全症状の症状が悪化するおそれがあるためと記載されている。腎機能がほとんど廃絶し,維持透析を受けている患者においては,この理由は当てはまらないと思われる。ただし,ヨード造影剤にしろ,ガドリニウム製剤にしろ体内からのクリアランスを考慮して透析直前に検査を施行することが望ましい。

54.
画像所見:
前立腺は腫大し,右後方への突出像がみられる。T2強調画像でみると左側では辺縁域の高信号が比較的保たれているが,右側では消失し,比較的低信号の腫瘍が後方へ延びている。左臼蓋〜恥骨にはT1強調画像で低信号域がみられ,脂肪抑制T2強調画像にて同部は比較的高信号となっている。
診断プロセス:明らかに被膜外浸潤を伴った前立腺癌と診断される。骨病変は転移を強く疑う所見であり,dが誤り。
解答:d
コメント:
bとeについて本当に誤りのない記載かどうか若干の疑問がある。脂肪抑制T2強調画像にて病変の右側縁に接して小結節構造が疑われる。前立腺癌では前立腺のごく近傍にリンパ節腫大を認めることもあり,本当にこの画像でリンパ節腫大を疑う必要がないのであろうか?また,病変と直腸前壁は接触し,直腸壁が肥厚している印象を受ける。
一般的にDenonvillier筋膜が存在するため,直腸浸潤の頻度は低いとされているが,出題症例においては直腸浸潤の否定は困難と考えられる。
択一であることが受験者に徹底されていれば悩まずに正解できると思うが,試験場で十分なアナウンスがなかったため,複数選択してしまった受験者もいたらしい。

55.
画像所見:
子宮前方に単房性嚢胞性腫瘤を認める。嚢胞内容はT1強調画像で軽度高信号,T2強調画像で強い高信号で,脂肪抑制法にて信号低下はみられない。血性あるいは高濃度蛋白を含有する内容液と考えられる。嚢胞壁は全体的に厚いが,造影後明らかな増強効果がみられない。腫瘤の周囲には液体貯留がみられる。
診断プロセス:突然の腹痛で発症した症例で,症状からの鑑別診断として,婦人科疾患では卵巣腫瘍の茎捻転,卵巣出血(黄体出血),子宮外妊娠の破裂,骨盤内感染症,卵巣腫瘍の破裂,漿膜下子宮筋腫の茎捻転や子宮筋腫の赤色変性などがあげられる。出題症例では嚢胞壁の増強効果が欠如していることより,卵巣嚢胞性腫瘤の茎捻転を疑う。
解答:c
コメント:
婦人科急性腹症の鑑別としては卵管卵巣膿瘍や卵巣出血もあげられる。卵管卵巣膿瘍は複数の嚢胞腔を有し,壁肥厚や充実部分をともなうことが多い。造影後は嚢胞壁や充実部分は増強される。卵巣出血は腹腔内出血の原因としても重要であるが,出血が少ない場合は,画像上小さな出血性嚢胞が検出されるのみのこともある。いずれにしろ出血した卵胞あるいは黄体がこれほど大きくなることはない。

(以上52〜55は聖路加国際病院・松尾義朋会員)

56.
<所見>
ダグラス窩にT1WI・T2WIともに筋肉と同程度の信号を示す5cmの腫瘤を認める。内部には脂肪,血液,嚢胞性変化を示唆する信号は認めない。ダイナミック MRIでは,腫瘤辺縁部に早期の染まりを認めるが,内部は徐々に淡く染まる程度である。辺縁平滑で周囲への浸潤はない。腫瘤左腹側には,正常卵巣が存在するように見える。少量の液体貯留はあるが,正常範囲でもよい程度。T2WIで一様な比較的低信号を呈する充実性腫瘤の鑑別。
a. ×:脂肪成分の存在が典型的。
b. ○:豊富な線維間質成分を反映し,T1WI・T2WIとも低信号を示し,造影後は軽度に造影されるものが多い。本例では左卵巣が存在するように見え,選択枝からは右卵巣由来の繊維腫が考えやすい。ただし右卵巣も存在するならば選択肢にはないがsolitary fibrous tumor も鑑別に挙がる。
c. ×:血液成分の存在が典型的。
d. ×:充実部分と嚢胞部分が混在した像をとる。充実部分の染まりも,線維腫に比べ強い。
e. ×:エストロゲン産生腫瘍。充実性腫瘍であるが,T2WIでは壊死性嚢胞成分を反映し不均一な信号を呈する。造影後は充実成分には染まりが見られる。エストロゲン産生に伴う随伴所見も見られることもある。

57.
<所見>
T2WIで不均一な信号を示す子宮内膜の肥厚があり,ダイナミックMRIでは,淡く不均一な染まりが認められる。junctional zoneは保たれている。後壁筋層には,T2WIで低信号域を認めるが,ダイナミックMRIでは特に周囲筋層との染まりに差はない。子宮の形態も変化している。子宮頸部の異常は認めない。子宮内腔を占める充実性病変の鑑別。
a. ×:子宮頚部のT2WI高信号の腫瘤を示す。
b. ×:筋腫はT2WIで様々な信号をとりえるが,通常は低信号を呈する結節病変として描出される。
c. ○:内膜の肥厚と造影後の淡い染まりを示す。本例ではjunctional zoneは保たれており,明らかな筋層浸潤はない。stage Ia以下と考えられる。選択肢にないが(異型)内膜増殖症,内膜ポリープが鑑別に挙がる。後者はもう少し不均一性を示すものが多い。
d. ×(○):T2WIでjunctional zoneと連続する辺縁不明瞭な低信号域を示す。その内部に点状の高信号域を認めることもある。造影早期では正常筋層よりも不均一に造影されるものが多いが,正常筋層と同程度に染まるものもある。問題の主旨が子宮後壁のT2WI低信号帯の解釈ではないため,解答は腺筋症ではなさそうだが腺筋症を確実に除外する根拠に乏しい。子宮収縮による変化を見ていると思われるが,まぎらわしい所見である。
e. ×:子宮頚管の閉塞機転により,子宮腔内に膿が貯留した状態で造影効果は認めない。

(以上56〜57は聖隷浜松病院・増井孝之会員)

58. 解答:e
胃小弯側と胃穹窿部壁内に拡張蛇行した血管が見られ,胃静脈瘤と考えられる。流入血管は左胃静脈で,流出経路のひとつは大動脈左方に見られる左下横隔静脈と考えられる。もっとも下のスライスを見ない限り本当に左下横隔静脈に注ぐか否かはわからない。また上のスライスで食道・傍食道静脈瘤が見られるかもしれない。したがって胃静脈瘤のみならず,食道静脈瘤に対する治療法も考えることになる。すなわちa, c, dはいずれも静脈瘤の治療法として選択肢となりえるし,bのTIPSも門脈圧を減圧して静脈瘤を縮小させる治療法として選択肢となる。eは早期胃がんなどに対する治療法なのでこれが正解となる。

59. 解答:a
左鎖骨下静脈または左内頚静脈から中心静脈カテーテルが挿入されている。椎体左縁に見られる造影剤は食道内,途中から左下方に向かって流れる造影剤は次第に分岐しており左気管支内の造影剤である。つまり本例は食道癌放射線治療後に食道・左気管支瘻を生じたものと考えられる。よって現在の症状に対する最も適当な治療は食道・気管支瘻を塞ぐことであろう。そこでカバー付きステントを食道に留置すればよい。左気管支内にカバー付きステントを入れると確かに気管支瘻は塞がるが,食道に瘻孔があいている以上今度は縦隔内に膿瘍を形成することになるであろうし,食道内腔は特に狭くないのでバルーンで拡張する必要もないであろう。ステントを留置しても完全に瘻孔が塞がらなかったり,中心静脈カテーテルを抜去せざるをえなくなったら経皮的胃瘻造設を栄養ルートとして考えよう。

60. 解答:b
膵臓の左前に見られる構造物は内部に気泡があり,膵尾部の腫瘤というよりは胃と考えられる。単純CTで残渣らしき軟部陰影のdensityはあまり高くなく血腫か否かは判断しがたい。造影CTでは,胃内腔に拡張した血管また造影剤そのものと考えられるhigh density areaが認められる。しかし血管にしてはあまりに胃壁から離れて内腔に突出しており,造影剤のextravasationと考える。ところで脾腫はみられず,膵尾部背側で脾静脈の拡張も見られず,小弯側に拡張した胃静脈もない。よって胃静脈瘤など門脈圧亢進に関連する病態はやや考えにくい。となると単純に症状の腹部膨満感は胃潰瘍からの出血と考えるのが妥当か。血管造影の前に内視鏡が先に行われるのが普通と考えるが,この選択肢のなかでは左胃動脈塞栓術が最も適した治療法ということになろう。左下横隔動脈を選択肢から外したのは,左下横隔動脈が噴門・胃穹窿部を栄養することがあることを作者が知っているからであろうか。

(以上58〜60は三井記念病院・衣袋健司会員)

61.(正解)d, e
脳梗塞は,一般的に血流欠損をしめす。しかし,luxury perfusionのときは,高血流をしめす。即ち,亜急性期脳梗塞である。脳出血は,血流欠損を示す。血腫は血流欠損像を示し,その周囲の浮腫は血流低下をしめす。脳炎は,急性期は高集積をしめし,慢性期では血流正常をしめし,atorophyがおこると血流低下をしめす。この問題は,右前頭回への後期相にて,高集積を認めます。時間とともに集積が増加するのは123I-IMPの能動的な腫瘍内取り込みである。その報告は,悪性リンパ腫,悪性黒色腫である。とくに,悪性黒色腫は有名である。

62.(正解)d, e
脳梗塞直後,脳出血は問61に解説している。示されたSPECT imageは,sagittal image であり,parietal に高集積をしめす。髄膜腫に高集積をしめすのは,99mTc-HMPAOは有名である。また,てんかん発作直後の高集積も有名である。精神分裂病のときは,発作があるときは,高集積をしめすことがある。しかし,parietalはまれであると考えれる。
しかし脳梗塞直後でしかも自然再開通の場合はあり得ると思いますので(a)も正解となるので,問題として条件説明不足でしょうか。

63.(正解)a, e
発症時と3ヶ月後のシンチである。この病態(亜急性甲状腺炎)では一般に機能亢進状態になっているのが普通であり,症状からもそれが暗示されていると思います。また,甲状腺組織の破壊を伴う。99mTc-O4を用いた甲状腺シンチでは,一般的にはヨード制限は不要であると言われております。最近では,CT検査でのヨード製剤を使用後に,シンチを施行して甲状腺が描出されないのを散見する。非常に稀ではあるが,cも正解となる。両顎下線への集積増加は,甲状腺へのradionuclide uptakeがないために,相対的に高集積を示したと考えられる。
かなりマニアックであり不適当問題と思われます。

64.(正解) c, d
副腎皮質シンチに用いるtracerは,131I-アドステロールである。7日後に撮像されており,画像からは明らかに131I-アドステロールと考えられます。問題文は,131I-アドステロールと記載している。核医学の問題にては,放射性医薬品の名前は正確に憶えることに注意しなければならない。副腎皮質シンチにては,正常副腎は描出される。右側の副腎は描画されておりませんので左の機能性腺種による正常側の抑制と考えられます。

(以上61〜64は久留米大学医学部・石橋正敏会員)

65. 解答 a, c
81mKr-ガスによる肺換気シンチは右側面像でやや不均一であるが,前面像,後面像,左側面像ではほぼ均一な集積がみられる。
それに対し,99mTc-MAAによる肺血流シンチでは右中肺野,左上肺野外側の血流は低下している。すなわち,右中肺野,左上肺野外側は換気が保たれているが血流欠損を示す換気・血流のミスマッチの所見から肺塞栓症が疑われる。右上肺野もその傾向がみられる。(右側面像S9では換気の軽度低下がみられるが)
肺塞栓症に対する換気血流シンチにおいてミスマッチの領域の程度から有徴正診率を示したPIOPED診断基準(改編)がある( 参考:最新臨床核医学 金原出版 久田欣一監修p.300,J. Nucl Med 36 p.1573-1578,1995,J. Nucl Med 36 p.2380-2387, 1995)。
閉塞性肺疾患では区域,亜区域に関係なく換気,血流の分布異常がみられる。とくに肺気腫では133Xe-ガスによる換気シンチを行うと,気腫部の洗い出し遅延の評価が可能である。81mKr-ガスによる換気シンチでは半減期13秒と短い為,洗い出し遅延の評価はできず,肺気腫の気腫性変化の強い部位は欠損となる。
肺動静脈瘻など右左シャントを有する疾患では,シャントの程度にもよるが体循環系に移行す99mTc-MAAが増加し,腎や脳が描出される。

66. 解答 a, b
99mTc-ピロリン酸心筋SPECT の体軸に対しての横断像,矢状断像,冠状断像が示されており,心筋への集積を認める。99mTc-ピロリン酸は心筋壊死部に集積し,壊死巣を陽性描画する。集積機序は壊死部のミトコンドリア内のカルシウムと関連して集積するとされている。発症後,1週間以内(とくに2〜3日)で陽性率が高い。
従って a.は正しい。
b. 正しい。通常の心臓の軸に対しての心筋SPECTとは異なるが,左室後側壁に集積
しており,責任血管は冠動脈左回旋枝と考えられる。
c. 99mTc-ピロリン酸はリン酸化合物であるから,骨への集積は正常である。
d. 99mTc-ピロリン酸と99mTc-MIBIでは同じ核種のため,Dual SPECTは行えない。Dual isotope(2核種)同時収集法は1回の検査でエネルギースペクトルの異なる光電ピークを同時に収集する方法。99mTc-ピロリン酸と201TlClであれば,放射性同位元素のエネルギーが異なるため,Dual SPECTを行うと,血流低下と梗塞部の関係が明らかになる。
e. 血流の全く途絶した梗塞巣には99mTc-ピロリン酸は集積せず,梗塞巣周辺にある程度血流の保たれた病変に集積する。従って本例のように梗塞巣に強い集積がみられる場合,血流量は著明に低下しているという文章は誤りするのがよいであろう。

67. 解答 d, e
胸部大動脈瘤のある場合は,運動負荷をかける検査は禁忌であり,本症例は薬物負荷の心筋血流シンチと考えられる。従って,c.は誤り。
負荷時,前壁から心尖にかけて,集積低下〜欠損がみられ,安静時には欠損や低下部が消失していることから左前下行枝の狭窄病変が示唆される。
胸部大動脈瘤の術前に,左前下行枝の狭窄病変が示唆されているから,リスク評価のため,冠動脈造影検査を行うべきである。
American Heart Association (AHA)のガイドラインシリーズ1997によっても,「心臓以外の血管手術を受ける患者は,臨床所見の有無にかかわらず冠動脈疾患を伴うことが多いことが知られている。これらの患者の周術期に発生する死亡と合併症は,通常は基礎冠動脈疾患によるものである。したがって,このような患者では心リスクを十分に評価する必要がある。」としている。
以上から,d, eが正しい。

68. 解答 画像のみの評価からはb, c。但し,実際には1回目の冠動脈狭窄の程度をみて心機能を合わせ総合判断するのが一般であり,b, eのことも十分ありうる。
労作時と安静時の心筋シンチグラムが示されている。肝臓の集積が著明でなく,99mTc製剤よりは201TlClによるシンチグラムと考える。労作時に側壁の著明な集積低下,安静時に再分布がみられるため,左回旋枝の狭窄が示唆される。
a. reinjectionかどうかはこの画像のみからは不明である。99mTc標識心筋血流製剤では運動負荷と安静時に各々投与する必要があるが,201TlClでは1回でも可能。
b. 正しい
d. 右室の集積は低下しておらず,むしろ描出されており,安静時でも拡大しており,右室負荷が認められる。
c, e. 画像のみから判定すると,側壁の虚血がみられることから,再度冠動脈造影検査施行を必要とする c.は正しい。しかし実際には血行再建術後の再狭窄の場合,保存的に経過観察するか冠動脈造影を行うかは,心筋シンチのみで判断されることはなく,1回目の冠動脈造影検査での冠動脈の状態や心機能を合わせ総合判断するので e.の選択も十分考えられる。無症状の場合にはリスクを伴う冠動脈造影の選択は慎重に行う。

(以上65〜68は大阪市立大学・岡村光英会員)
                
69.
症例について,SPECT上は,肝の形状は正常であり右葉の萎縮を認めない。右葉の下極に高集積像を認める。典型的な肝硬変ではない。
次に,99mTc-phytateについてまとめると・・・
現在,99mTc-phytateはセンチネルリンパ節シンチグラフィによく使われているが,もともとは肝のRIイメージング製剤である。99mTc-phytate自体はコロイドではないが,血中(体内)でカルシウムを取り込みコロイド状となり,Kupffer細胞等の網内系細胞により貪食される。肝イメージング用のコロイド製剤には,フィチン酸の他にスズコロイド,サルファコロイド,レニウムコロイド等がある。 肝へは投与されたコロイドの80-85%が集積する。網内系腫瘍を持たない悪性肝腫瘍はまず除外される。また高分化型肝細胞癌や海綿状血管腫(以下,血管腫)でも,網内系細胞が多少存在すれば集積する場合がある。
限局性結節性過形成(FNH)は,境界で明瞭で中心部に線維性星芒状瘢痕を伴う過形成性の結節性病変であり,網内系細胞が様々な程度に存在する。周囲に比し高い集積が10%の症例に,同じ程度の集積が50%に認められる。Gamutsより孤立性の高集積像を呈する疾患は,FNH,上大静脈症候群や下大静脈症候群,肝静脈閉塞症,肝硬変(再生結節)がある。まれに,肝細胞腺腫,肝細胞癌や血管腫でも高集積を示し,これらの病変が鑑別すべき疾患と考える。
以上より,答えとしてはeが正しい。
ちなみに血管腫は,99mTc標識赤血球などによるRIアンギオグラフィの血液プール相で高集積像として描出される。

70.
この症例に使われている99mTc-MAG3は腎機能を測定するための放射性医薬品である。腎の描出及び機能測定には,1.近位尿細管分泌物質(99mTc-MAG3, 131I-OIH),2.糸球体濾過物質(99mTc-DTPA),3.腎皮質集積物質(99mTc-DMSA)がある。99mTc-MAG3は1.の近位尿細管分泌物質であり,131I-OIHより1回循環透過率は低いが(50%),糸球体濾過率が低く(5%以下),近位尿細管分泌能,有効腎血漿流量の定量が可能である。レノグラム曲線は,正常型,機能低下型,閉塞型,無機能型の4つの型に分けられる。正常型は血流相(20〜30秒),機能相(3〜5分),排泄相(T1/2まで6〜8分)の3相を有する曲線である。機能低下型は軽度ないし中等度の腎機能障害時にみられ,レノグラム曲線の全体的な低下や機能相の勾配延長が見られる。閉塞型は尿路狭窄などによる排泄障害の時に見られ,機能相の上昇が緩徐に延長し,排泄相が欠如する。無機能型は高度機能障害腎または無機能腎で,血流相の低下,機能相の欠如が見られる。(正常のレノグラムは教科書を見て下さい!)
この症例のシンチグラフィの所見は以下の通りである。動態シンチグラフィでは,左腎への集積は低く,左腎の大きさは小さい。しかし欠損像の有無ははっきりしない。よってシンチグラフィ上,腫瘍の有無は不明である。右腎への集積は良好であるが,時間がたってもRI停滞著明である。右尿管の描出を認めるが,10分,20分,30分とその形態に変化を認めない。正常では尿管の蠕動により形態も変わり,症例ほど高集積には描出されない。症例の右尿管には,拡張があるものと考えられる。レノグラム曲線は,左腎は無機能型,右腎は閉塞型を示す。
答えとしては,aとeが誤っている。簡単な問題である。
 
71.
一見,正常そうな骨シンチグラフィである。四肢や肋骨,脊椎,骨盤,頭蓋骨に異常集積を認めない。以上より副甲状腺機能亢進症や胸部打撲(肋骨が多い)は考えにくい。
目立つのは,両側の胸鎖関節と胸骨・第1肋骨の肋軟骨の関節部への左右対称な集積である。また胸骨柄結合あたりにも集積がある。以上より胸肋鎖骨間骨化症をまず考えるべきであろう。
掌蹠膿疱症に伴う骨関節病変のうち,胸肋鎖骨部の病変が特徴的で,骨シンチグラフィで初期より検出することができる。この症例は掌蹠膿疱症性骨関節炎と考えるべきであろう。よって答えはdが正しい。
骨転移との鑑別点は,左右非対称であるかどうかだが,症例によっては悩ましい場合がある。そのときはCTとの比較が必要と考える。
 
72.
治療前の骨シンチグラフィでは肋骨,脊椎,右肩峰,右上腕骨頭,右寛骨臼,右仙腸関節に高集積像を認め,治療後には増悪し,左肩甲骨や腸骨,右恥骨,左大腿骨頭,右大腿骨幹に拡大している。正常例において,鎖骨肩峰端の左右非対称は約3%,烏口突起や上腕骨頭の左右非対称は約2%に見られ,いずれも利き腕側によく見られる。この症例での右鎖骨肩峰端,烏口突起の集積は生理的集積像であろう。
flare phenomenonとは,転移性骨腫瘍の治療が臨床上有効であるにもかかわらず,異常集積が治療前に比べ強く認められる現象であり,治療後早期(3カ月以内)に見られることが多い。flare phenomenonは6〜23%の症例で見られ,乳癌,前立腺癌,肺癌の化学療法,内分泌療法での報告が多い。しかし,この症例に関しては,提示された骨シンチグラフィは治療開始110日後であり,異常集積の増悪をflare phenomenonと診断 してはいけないと考える。また,3カ月以内なら前述の通り,flare phenomenonで「しばしば」と表現してもよいかもしれないが,3カ月以上となると泌尿器科医に失礼かと思われる。
答えとしては,aとbが正しい。flare phenomenonについての知識がないと,戸惑ってしまう問題である。

(以上69〜72は滝宮総合病院・松野慎介会員)

73.
1)診断所見

SPECT上,左大腿骨骨幹端内側にearly image,delayed imageとも201Tlの高集積が認められる。
2)診断プロセス
delayed imageでも集積が遷延していることから,悪性骨腫瘍を考える。
3)解答
a.誤:骨端線に高い集積が認められる。
b.正:SPECT上,delayed imageの方が筋肉への集積が強く見える。
c.正:SPECT上そのとおりの所見を呈している。
d.誤:骨の血管腫は成人の脊椎や頭蓋に多く,13歳の児の大腿骨には稀である。通常血管腫の評価に201Tlを用いることはないので,201Tlが集積するかどうか個人的には経験がない。Medlineで検索したが,201Tlが骨の血管腫に集積したという報告はない。血管腫にはあまり集積しないと考えるのが妥当であろう。
e.正:症例は骨肉腫の好発年齢,好発部位を満たしている。SPECT上,高い集積がearly image,delayed imageともあることから悪性が考えられる。
解答 誤っているのはaとd。
4)その他
常識的に考えれば正解に達すると思う。
SPECTの画質は良好である。普段あまり見ない画像なので,冠状断像であること,どちらが腹側,背側か,どこが関節面かなど示していただいた方が親切であろう。不用意に受験者を戸惑わせる必要はない。

74.
1)診断所見

67Ga全身シンチグラム上,左下頸部,縦隔,腹部正中に高集積が認められる。両側顎下部の集積は顎下腺かリンパ節か判定しにくい。脾腫がある。
2)診断プロセス
悪性リンパ節であることはわかっているので,病変の広がりの評価になる。横隔膜の上下両側にわたっているのでstage III以上である。
3)解答
a.誤:横隔膜の上下両側にわたっている。
b.誤:肝の大きさ,集積の強さは正常範囲なので悪性リンパ腫のびまん性浸潤を示す積極的な所見はない。
c.誤:縦隔の集積が最も高いもののそれだけでは原発巣かどうか判定できない。なお悪性リンパ腫の場合は「原発巣」というより「初発巣」というほうが適切と思う。
d.正:横隔膜の上下両側にわたっているのでstage III以上である。
e.正または誤:これは議論が分かれる。そもそも悪性リンパ腫の評価には67Gaが頻用されてきた。悪性リンパ腫に対する67Gaと201Tlの比較については見解は確立されていない,というのが妥当ではないだろうか。Low grade lymphomaでは67Gaの検出率が201Tlよりも低いと報告されている。しかし,201Tlはhigh grade lymphomaに対しては low grade lymphomaに対するより集積が低いとされる。また腹部のリンパ腫病変の評価において,201Tlは腸管そのものへの生理的集積が不可避なため腹部の評価が困難であるのに対し,67Gaは下剤服用などによって排便を行えば腹部の評価がしやすい,という違いがある。
以上Diagnostic Nuclear Medicine 3rd ed Sandler et al.(ed)1996
Williams&Wilkinsなど参考。
解答 正しいのはd。eも正しいとするべきなのか。a,b,cは明らかに間違い。
4)その他
上記のようにeの選択肢の題意がわかりにくい。このような問題は作成を避けていただくほうがよいと思う。

75.
1)診断所見

99mTc-MAA肺血流シンチグラフィ全身像において,肺の他,脳,腎に集積があり,右左シャントがあると判断できる。
甲状腺,胃にも集積があるのは遊離した99mTcのためであろう。また膀胱にも放射能があり,これらのことから,99mTc-MAA投与後数十分以上たってからの撮影と思われる。
肺のスポット像(planar像)において右上葉,中葉,下葉,左上葉,舌区などに欠損がある。
2)診断プロセス
上記のように右左シャントがあるのでそれが心か肺かが問題になる。 左上肺野に脈管を思わせる欠損像があるのは肺動静脈瘻かもしれない。その他心レベルの右左シャント,肺内毛細血管の拡張によるシャント(肝硬変に伴う)なども考えられる。
3)解答
a.誤:甲状腺の形,大きさ,集積の強さは正常範囲と思われる。
b.正:そのとおりである。
c.正:そのとおりである。
d.正:右左シャントがあることから,肺動静脈瘻が診断のリストに挙げられる。左上肺野に脈管を思わせる欠損像があるのは肺動静脈瘻か。
e.誤:シャント率をどのように定義するか,にもよるが,脳・腎が描出されるのは概ねシャント率15%以上であるとされている。この場合のシャント率とは,肺血流シンチグラム上投与した放射能のうち肺以外に分布する率である。シャントがなくても99mTc-MAAは投与後徐々に分解されて肺から洗い出され,1時間の時点で10%ほどが肺以外の全身に分布する。
解答 誤っているのはaとe。
4)その他
eの選択肢は「シャント率」の定義がやや曖昧である。「肺以外に分布する放射能は投与量の10%程度である」のように表現したほうがよいかもしれない。

(以上73〜75は埼玉医大総合医療センター・細野 真会員)