二次試験問題解答および注釈【治療】30.〜50.

30.解答 d
* 米国国立癌研究所(NCI)のCancer Netでは,乳癌のハイリスクファクター*として,年齢(高齢者),人種(白人),乳癌の既往・家族歴 (+),atypical hyperplasia・lobular carcinoma in situの診断 (+),遺伝子(BRCA1・BRCA2),長期のエストロゲン暴露(早い初潮年齢・遅い閉経・子供を有しない女性など),高齢初産,乳腺の放射線被曝(Hodgikin病への放射線治療の既往など),飲酒,などをあげています。

31.解答 c
日本乳癌学会による乳房温存療法ガイドライン(1999)では,その適応条件を,腫瘤の大きさが3.0B以下のもの,各種の画像診断で広範な乳管内進展を示す所見(マンモグラフィで広範な悪性石灰化を認めるものなど)のないもの,多発病巣のないもの,放射線照射が可能なもの(適応外となる症例:重篤な膠原病の合併症を有するもの・同側胸部の放射線照射の既往のあるもの・妊娠中のもの・患者が照射を希望しないもの),患者が乳房温存療法を希望すること,としています。具体的な照射法については,60Coγ線または4〜6MV X線を使用すること,(結果的に照射されるリンパ節はあると思いますが)所属リンパ節は原則として照射しないこと,照射野内に10%以上の線量差を生じた場合は wedge filter を用いて分布を改善すること,などが記載されています。

32.解答 d
a. 非定型乳房切除術を受けた閉経前・腋窩リンパ節転移陽性乳癌患者において,胸壁および腋窩・内胸リンパ節への術後照射の併用は,化学療法(CMF6-12 cycle)単独治療よりも局所コントロールだけでなく10年生存率を改善する,という報告があります。
N. Engl. J. Med. 337 : 949-955および956-952, 1997
b. 腋窩リンパ節は,レベルI(小胸筋の外縁より外方のリンパ節),レベルII(小胸筋裏面のリンパ節と胸筋間リンパ節),レベル。(小胸筋内縁より内方のリンパ節)に分類,郭清されます。
c. St. Gallen conference (1998)で提唱された腋窩リンパ節転移陰性乳癌患者のリスク分類を示します。*St. Gallen conference (2001)もお目通しを。
Minimal/low risk Intermediate risk High risk
下の四つ全てに該当 下のいずれか一つに
該当
腫瘍の大きさ ≦1cm 1<, ≦2cm 2cm<
ER/PR* いずれか陽性 いずれか陽性 ともに陰性
病理学的悪性度 Grade 1 Grade 1〜2 Grade 2〜3
年齢 ≦35歳 35歳<

*ER/PR:estrogen receptor/progesterone receptor
d. sentinel node biopsyは,原発病巣から最初にリンパ流を受けるリンパ節を同定し,そのリンパ節への転移の有無を検索することにより,従来の腋窩郭清の省略を目的としています。
e. BRCA1遺伝子異常は女性乳癌のハイリスクファクターです。(男性乳癌との関連については筆者はよくわかりません。)

33.解答 c
a. 岩崎ら(病理と臨床12:536-541,1994)は,m癌のリンパ管侵襲・脈管侵襲・リンパ節転移の頻度をそれぞれ11.1%・11.1%・4.5%,sm癌ではそれぞれ76.7%・79.7%・42.9%と報告しています。
b. 切除可能な食道腺癌において,術前化学放射線療法は手術単独治療より予後を延長させる,という報告があります。(N. Engl. J. Med. 335: 509-510, 1996)
d. 大川ら(Int J Radiat Oncol Biol Phys 45:623-628,1999)は,T1-2あるいは長径5cm以下の症例では外照射単独治療群よりも腔内照射併用群がcause-specific survival rate が良好であったのに,T3-4あるいは長径5B以上の症例では両群にそのような差がなかった,と報告しています。
e. 食道穿孔のリスクが高いので,T4症例に限らず,ステント留置と照射との併用は極力さけるべきです。

34.解答 cとd
土器屋ら(日放腫会誌 7:213-219,1995)によれば,腔内照射の際,評価点線量の2倍以上の線量に囲まれる範囲をhyperdose sleeveと称し,この範囲は大線量で線量勾配が強く,ここに含まれる組織には壊死などの放射線治療による合併症が起こるリスクが高いとされています。このhyperdose sleeveの半径は線源中心から評価点までのほぼ0.6倍であるとされており,選択肢c.ではhyperdose sleeveの半径:(5+5)×0.6 = 6mmのなかに粘膜表面(線源中心から5mm)および粘膜下1mmまでが含まれることになり危険です。
選択肢d.については,sm癌のリンパ節転移率は前述のように約50%ですので,根治を目指すには,腔内照射単独治療でなく,リンパ節領域を含めた外照射の施行が不可欠です。

35.解答 d(難しい問題ですね。)

(以上30〜35は長崎大学医学部・林 靖之会員)

36.正解はc
a. 誤:初診時に遠隔転移を認めず,姑息手術に終わった局所進行膵癌のMSTは4から6か月とされている。中央値約3か月は遠隔転移を伴う症例の生存期間と思われる。
b. 誤:術中照射単独の生存月数は4から8か月.比較対照が記載してないが姑息手術との比較と考えれば生存期間の延長はない。
c. 正:GITSG(Gastrointestinal Tumor Study Group)による切除不能膵癌のprospective randomized studyで,外照射と5FUの併用による生存期間中央値は10か月という結果が報告されている。他の報告でもほぼ同様の値であある.
d. 誤:肝を含めた照射のsurvival benefitはequivocalである.
e. 誤:化学放射線治療と術中照射の併用は有効な手段と考えられるが,高い局所制御率は得られない.

37.正解はcとd
a. 誤:術後の縫合不全を考慮すると,膵断端はIORTの照射野に含めないのが一般的である。
b. 誤:IORTにおける末梢神経の耐用線量は30Gyとされているが,15Gyでも末梢神経障害が出現したという報告がある。
c. 正:IIORTにおける胆管の耐用線量は20Gyとされている。20Gyを超えると胆管の線維化による狭窄が出現することがある。‘安全’と断定できるかは疑問であるが,2つ選ぶとするとこれを正解とするのが妥当と思われる。
d. 正:切除例では,この程度のエネルギーが妥当と思われる。
e. 誤:IORTにおける小腸の耐用線量は20Gyとs荒れている。20Gy以上で潰瘍や狭窄が生じることがある。30Gy以上では穿孔の危険性がある。消化管が照射野に含まれる場合照射野内容積の比率によって16-20Gyとすべきである.

8.正解はbまたはc(どちらかというとb)
わが国における子宮頚癌の標準的放射線治療プロトコールとしては,子宮頚癌取り扱い規約に記載された方法に従うことが一般的である。設問からこの症例の病期はIIIB期である。子宮頚癌取り扱い規約に従えば,III期では,癌の大きさが‘小または中'の場合には,外照射は全骨盤に20-30Gy,中央遮蔽で20-30Gy(合計50-55Gy),高線量率腔内照射は23Gy(20-25Gy)/4回が標準治療とされている。一方,癌の大きさが'大’であれば,全骨盤30-40Gy,中央遮蔽後20-25Gy(合計50-55Gy),腔内照射(高線量率)はA点で15Gy/ 回または20Gy/ 4回が標準的とされている.大きさが‘大’の解釈はまちまちであるが,両側骨盤浸潤を認める場合とするのが一般的である。最近ではMRIが参考にはなるが,MRI所見を考慮した標準プロトコールは確立されていない。設問の症例の癌の大きさが‘中’とするか‘大’とするか判断が困難で,解答はbかcか悩む。cはA点線量が多いことからbが正解と思われるが,cも誤りとは言いがたい。

39.正解はc
子宮頚癌III期の5年生存率は約50%と考えられる。

40.誤りはd
a. 正
b. 正
c. 正
d. 誤:直腸潰瘍にはプレドニンの局所注入が有効とされているが,狭窄には手術が必要.
e. 正:腹部手術による消化管の癒着は耐用線量低下の原因の一つである。帝王切開も開腹手術の一種と考えられる。
参考
1. 大川智彦 編:癌・放射線療法 '95,篠原出版,東京,1994.
2. 小塚隆弘 編:臨床放射線科のコツと落とし穴・治療,中山出版,東京,1999.
3. 日本産婦人科学会:子宮頚癌取り扱い規約第2版,金原出版,東京,1997.
4. Harvey BW: Intraoperative radiation therapy. In Liebel SA, and Phillips TL eds. Text book of radiation oncology. Philadelphia. WB Saunders company, 1998

(以上36〜40は群馬県立がんセンター・玉木義雄会員)

41.解答 a
Sjoegren症候群の合併症として,唾液腺,涙腺などの臓器特異的自己免疫反応を基盤として発生するリンパ増殖性病変の存在がよく知られている。このうちMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫(マルトーマ)は,Bリンパ球の反応性多クローン増殖,反応性単クローン性病変, MALTリンパ腫,そして高悪性度リンパ腫へと進展する多段階悪性化のone stepと考えられている。一般に, Sjoegren症候群の約25%に何らかのBリンパ球系の単クローン性病変が,約5%に悪性リンパ腫が発症するとされている。
提示症例においては,病変が径30mmと限局した口蓋部の隆起性粘膜下腫瘍であることや,骨破壊や病的リンパ節腫脹を伴わないことから,選択肢の中では,口蓋部粘膜の小唾液腺に発生したMALTリンパ腫を第一に疑うべきであると考える。

42.解答 b
MALTリンパ腫は,REAL分類ではmarginal zone B-cell lymphomaとして位置付けられる。MALTリンパ腫のBリンパ球は局所に定着する性質を有し,悪性化しても長期間局所に留まる傾向があるため,全般にその臨床経過は緩やかであるとされる。多くの場合,節外性リンパ腫として,また臨床病期(Ann Arbor)I,II 期の限局性病変として診断される。提示症例は,他部位に病変が認められなければ檸 期として分類されるであろう。
胃初発例以外のMALTリンパ腫では,孤立性汪病変の標準治療は放射線治療,外科的切除などの局所療法であり,初期治療としての化学療法は一般に不要と考えられている。
放射線治療の場合,involved fieldで30Gy/15回/3週間程度の線量を投与すれば制御可能とされている。提示症例は,腫瘍が口蓋部に発生しており,手術に伴う侵襲・機能損失を考慮すると放射線単独治療を選択すべきケースと考えられる。
ただし,胃MALTリンパ腫に対しては,H. pyloriの除菌による腫瘍退縮の報告が多数あることから,まず除菌治療を第一選択とする治療方針が現在検討されている。

43.解答 e
MALTリンパ腫の予後はきわめて良好である。最近検討した文献でも,頭頚部領域を中心とした氈C期症例の放射線治療による累積5年生存率は,90%台後半〜100%,10年生存率で80%台〜100%などといった成績が示されている。従って,汪病変と推測される提示症例に関しては,設問の5年生存率に関する選択肢の中ではeが最も近い値と考えられる。しかし,複数臓器に浸潤しやすい特定のsubsetの存在も報告されており,回答としてdも必ずしも間違いとはいえない。

44.解答 d, e
この問題は,前立腺癌の根治〜準根治的な治療を想定した問題であると解釈して,解答・解説をする。
a. ×:これは問題ないと思われる。
b. ×:多くの場合,PSA値は照射中に減少し始めるが,nadirにいたる期間はtumor bulk に応じてかなり幅があり,通常数ヶ月を要する。ただし一部には,照射中に一過性の PSA 値上昇がみられるケースもある。
c. ×:神経温存手術の発達など外科療法の進歩も見られるが,3D-RT,組織内照射,さらにはIMRTなど近年の技術的進歩により放射線治療の有用性がより増している。
d. ○:前立腺位置の変動は,主に直腸や膀胱の容量・内容などに影響を受けるが,通常は,前後方向で5〜10mm,側方向で1〜2mm,頭尾方向で約10mmといった程度であるとされる。従って,一応○とした。ただし,前後方向で最大15〜22mm変動する場合があるとの報告もあり,厳密な意味では×となる。
なお,精嚢腺位置の変動は前立腺よりも大きい。
e. ○:設問に挙げられた,臨床病期,PSA,Gleason scoreはいずれも最重要な予後因子とされており,その重要度は甲乙つけ難い様に思われる。
ただし,前立腺癌根治照射例のthe 1989 patterns of care study(Chuba et al, IJROBP, 2001)を参考にすると,概ねPSA> or = Gleason score>T-stageという結果であり,一応○として良いと思われる。

45.解答 a, c
前立腺の所属リンパ節は,内腸骨リンパ節,外腸骨リンパ節,閉鎖リンパ節である。

(以上41〜45は青森県立中央病院・真里谷 靖会員)

46. 解答:c,e
a. 誤:一般的な照射野の下縁は第2頸椎下縁。
b. 誤:視神経に沿うくも膜下腔は照射野に含める。
c. 正: 1回1.5Gy,週5回,総線量 18Gy/12回が一般的。
d. 誤
e. 正

47. 解答:a,e
a. 正:腫瘍細胞が死滅すると核酸は代謝されて尿酸になる。白血病細胞の放射線感受性は高いため,大きな腫瘤が急速に縮小することもあり,その時は高尿酸血症が生じる可能性がある。
b. 誤
c. 誤:必ずしも誤りとは言えないが,一般的ではない。
d. 誤:両側腎へは6〜10Gy/4〜7分割で,化学療法と併用する。
e. 正:睾丸再発では,両側睾丸,副睾丸を照射野に入れ,1回1.5〜2Gy,総線量
24〜25Gyを前方1門照射する。陰茎は照射野から外す。

48. 解答:a,c
a. 正
b. 誤:術後照射開始日は術後9日より遅れてはならない。
c. 正:両全肺照射(12Gy),全肝照射(20Gy程度)を行うことがある。
d. 誤:放射線感受性が高く,総線量は10Gy程度が用いられる。
e. 誤: 1日線量1.8Gyで週5日間照射を原則とする。

49. 解答:b,e
a.  誤: Wilms 腫瘍のほうが予後良好である。
b. 正:新生児期に発見される巨大な肝転移は,肝破裂あるいは呼吸不全で致命的になることが知られている。1日1回1Gy,総線量5Gyで肝転移は縮小し,緊急事態を脱することができる。
c. 誤: I 期,II 期でリンパ節転移がなく完全摘出されたものには術後放射線治療は必要ない。
d. 誤:術後照射は,1歳以下20Gy/2.5〜3週間,2歳まで24Gy/3週間,2歳以上30Gy/3〜4週間は必要とされる。
e. 正: 1歳を境に予後は異なる。II 期以上で1歳を超えると予後は不良。

50. 解答:a
a. 誤:硬化縁を伴う無症状の骨病巣は自然治癒することもあるため,経過観察されることもあるが,有痛性の骨病巣には,1回1.5〜2Gy,総線量6〜10Gyの照射が一般的。
b. 正:乳児に発生する大きな血管腫で血小板減少を伴う症候群であり,DICを併発し出血死するおそれのある疾患である。ステロイド療法などの治療に反応しない場合は緊急放射線治療の適応になる。1回1Gy,総線量は10Gy以下が一般的。
c. 正: 1回2Gy,週5回,総線量20Gyの照射が標準的。
d. 正:輸血後GVHD予防するには,血液製剤に15〜50Gyの照射が必要といわれているが,実際には15〜25Gyの照射が多いようである。
e. 正: 1回3〜5Gy,週2〜3回,総線量12〜20Gyの照射が一般的。

(以上46〜50は愛媛大学医学部・藤井 崇会員)