放射線科専門医認定一次試験 解答 1〜30

1.解答:b
a:正 
b:誤 放射線診療従事者の実効線量限度は (1)5年で100mSv (2)年間で50mSv (3)女子にあっては3か月で5mSv (4)妊娠中の女子にあっては出産までの内部被曝1mSv のいずれをも超えないことが必要。
c:正 前項参照 
d:正 e:正

2.解答:a
a:正 遊離の99mTcの尿中への排泄を促進する結果、被曝が低減される。
b〜e:誤 いずれも根拠なし。eは放射性医薬品が腸管内に排泄されるガリウムスキャンや肝胆道シンチなら意味を持つだろう。

3.解答:d
a:誤 論外。 
b:誤 これも論外 
c:誤 これも論外(皮膚線量ではCTは胸部単純エックス線写真の100倍にも達する) 
d:正 ほとんど、という表現が曖昧で問題だがおおむね正しい。
e:誤 妊娠中であっても緊急性があり代替できるもののない検査は施行すべきである。

4.解答:d
a:誤 「3Gy以上5Gy未満」が正しい。
b:皮膚面線量の低減には焦点と皮膚面の距離を大きく取ることが有効(IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン) c:誤 医師側からの皮膚の異常の有無の確認時期は特にガイドラインには記載されていないが、「継続した皮膚観察を主治医サイドに願いする」とあるので、観察はただちに開始すべきであると解釈される。
d:正 I.I.の感度が低下すると管球の出力を上げなければならず、線量は必然的に増加する。
e:誤 皮膚腺量の測定法は色々あるが、原則的には電離箱線量計または半導体検出器を使用する。

5.解答:d
a:誤 このケースは緊急性があり、いわゆる「10日則」にはあてはまらない。なお、「10日則」は現在は用いられない古い概念。
b:誤 骨盤の単純エックス線写真の撮影で胎児に影響が出ることはないので妊娠中絶の必要はない。
c:誤 同様に、将来の不妊のリスクが増大することもない。
d:正 
e:誤 このケースは緊急X線撮影の絶対的適応であり、妊娠反応を見る必要はない。

以上1〜5は田中淳司会員(埼玉医科大学)

6. 正解:a
腹部CTによる胎児の被ばく線量は8.0 mGyと推定されている(ICRP, Publ.62, 84, 87)。流産、精神発達遅延、奇形、小頭症のしきい線量はそれぞれ、100mGy、120-300mGy、100mGy、100mGyと考えられている。また胎児期の被ばくにより統計的に有意な癌の増加がみとめられている線量は10mGyである。ただし、発がんや遺伝的影響に関してはしきい線量は無いと仮定されていることからすれば、どんなに微量な放射線被ばくであっても、線量に応じて発がんや遺伝的影響のリスクは高まると考えなければならない。この問題では、「障害」に発がんや遺伝的影響は含めないものと考えて、正解はaであろう。

7. 正解:bとc
a: 確率的影響にしきい値はない。
b: 遺伝的影響は確率的影響である。
c: 白内障にはしきい線量が存在し、確定的影響である。
d: 放射線による発がんは確率的影響である。
e: 放射線による不妊には男女共にしきい線量が存在し、確定的影響である。一時的不妊のしきい線量は男性で0.15Gy、女性で0.65Gy、永久不妊のしきい線量は男性で3.5-6.0Gy、女性で2.5-6.0Gyである。

8.正解:bとc
a: DNA2本鎖切断は放射線以外の原因でも発生する。
b: DNA2本鎖切断の修復は主に非相同末端結合と相同組換えにより修復される。
c: DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-dependent protein kinase, DNA-PK)は非相同末
端結合に関与する。
d: Bcl-2はアポトーシス抑制に作用し、DNA2本鎖切断修復には直接関与しない。
e: 放射線によるDNA2重鎖切断の修復は照射4-6時間後にほぼ終了する。1時間以内に修復が終了することはない。

9.正解:a
a: 細胞は酸性で熱処理された時の方が致死効果は大きい。
b: 細胞周期ではS期が最も放射線抵抗性である。
c: Tirapazamine (SR-4233)は、生体内還元物質で、低酸素状態で1電子還元を受けてフリーラジカルとなって強い細胞毒性を示す。
d: Amifostineは活性酸素のスカベンジャーとして作用し、放射線防護剤として用いられる。
e:100Sv以上の全身被ばくでは、中枢神経死で死亡する。

10.正解:dとe
a: 一般的には、線量率が低下すると生物効果が小さくなるが、HeLa細胞を含む一部の細胞では、ある線量域(HeLa細胞では0.37 Gy/h)で生物効果が逆に大きくなる現象が観察される。これは、その線量域の放射線により放射線感受性の高いG2期に細胞が集積するためと考えられている。それより高い線量率では放射線抵抗性のS期にも細胞が集積し、また、それより低い線量率ではG2期で細胞周期が止まらないため、放射線感受性は低い。
b: 線維芽細胞では増殖死による細胞死が主である。
c: 低LET放射線では、酸素の存在下では無酸素の時より放射線の生物学的効果は大きくなり、酸素効果と呼ばれる。この現象は高LET放射線では認められないことから間接作用の関与が考えられるが、酸素効果の正確なメカニズムは明らかではない。照射直後に空気中の酸素分圧を0.5mmHgまで下げても一般的には生存率は上昇しないと考えられる。
d: 一定の放射線量を2回に分け、時間間隔を置いて照射した時に細胞生存率が上昇する現象を亜致死障害(sublethal damage、SLD)の修復と呼ぶ。
e: 照射後細胞環境を特定の条件(生理食塩水中での培養や、細胞が密集し増殖が抑制された定常状態での培養)に置くことにより生存率が高くなる現象を潜在的致死障害(potentially lethal damage、PLD)の修復という。ただし、生理食塩水中での培養のように相当極端な低栄養状態でないと放射線感受性の変化はほとんど認められない。

11.正解:c?
設問は明確でなく、解答も条件付になる。「比較できる」の意味が正確ではないし、「分割照射法を比較する」といっても具体的に何を指標にするのか明確ではない。
a: TDFの元になるNSDの値は10回から25回の分割照射において等効果線量を推測する事ができるとされていることから、比較はできない。
b: 週5回で20回照射の場合には、再増殖等も加味しなければならないので単純には比較できない。
c: LQモデルではα/βを知ることは当然重要である。この設問のみが明らかに正しいので、出題者の意図として他は間違いなのであろう。
d: 1回照射と6時間間隔の2回照射であるならば、DNA修復はほぼ終了しているので比較できる。6時間間隔の分割照射であっても、分割回数が多くなれば再増殖等が起こり単純には比較することはできない。総線量が決まっていてその生物効果を比較するのか、正常組織との兼ね合いで2つの照射法を比較するのか、殺細胞効果のみを比較するのか設問の意図が不明である。
e: LQモデルには元来は修復の概念が入っていない。現実的には細胞生存率曲線が肩を持つのはDNA修復によるため、分割照射法をLQモデルから比較するためには修復が終了している状態で比較しなければならない。

12.正解:aとc
a: 高LETでは低LETに比較して酸素効果は小さい。
b: 高LETでは低LETに比較して放射線の間接作用による効果の割合が小さい。
c: 高LETでは亜致死障害(sublethal damage、SLD)の修復や潜在的致死障害(potentially lethal damage、PLD)の修復が小さく、細胞生存率曲線の肩が小さい。
d: 中性子線は高LETであるがBragg peakを持たない。またπ-ではBragg peakではなくstarという。
e: RBEはLETが100-200 keV/μmのところで最も高く、これより高いLETではRBEは逆に減少する。

以上、6〜12は細井義夫会員(東京大学)

13番 解答 d
a. 正 原子核を構成する陽子と中性子の2つを核子という。
b. 正 原子番号とは原子核に含まれる陽子の数のことである。
c. 正 陽子と中性子の質量は、それぞれ1.67252×10-27Kg、1.67482×10-27Kgでほぼ等しい。
d. 誤 1Gyとは物質1kgに1J(ジュール)のエネルギーを与える放射線の量をいう。
e. 正 放射能とは1秒当たりに崩壊する原子核の数であり、その量は含まれる放射性同位元素の量に比例する。

14番 解答 a,d
a. 正 特性X線は軌道電子の遷移に伴い発生するX線であり、そのエネルギーは遷移間の軌道エネルギー準位の差に相当する。
b. 誤 α線はヘリウム原子核であり、2つの陽子と2つの中性子から構成される。
c. 誤 β線は原子核壊変に伴い発生する電子のことである。
d. 正 γ線は核異性体遷移や軌道電子捕獲などに伴い、遷移状態にある原子核が安定状態に戻る際に余剰エネルギーを外部に放出するときに発生する電磁波である。
e. 誤 速中性子(高速中性子)とはイオン加速器などにより発生する0.5MeV以上(一般的に)のエネルギーをもつ中性子のことである。原子炉等を用い、減速剤を通して発生する比較的低エネルギーの中性子は熱中性子という。

15番 解答 d
a. 正 PETで用いられている検出器はBGOやLSOシンチレータで、SPECTで一般的に用いられているNaIシンチレータに比べ、密度及び実効原子番号が大きいので線源弱係数が大きい。
b. 正 PETは陽電子の消滅γ線(511keV 180°対方向)を同時計測するため、その吸収減弱の量は体厚を反映するためその補正は比較的容易である。
c. 正 PETは、SPECTに比べると吸収補正が容易であること、散乱線の影響がすくないこと、感度が高いこと、空間分解能が高いこと、ダイナミック測定が容易であることなどの理由により、総合的に定量性に優れているということができる。
d. 誤 PETには物理コリメータがないため、検出器に入射する光子の数に物理的な制限がかからなく感度は高い。セプタのある装置はあるが、SPECTの物理コリメータに比べると大幅な感度低下にはつながらない。
e. 正 PETのγ線測定方法である同時計数は、同時計測されたラインが指向性のある光子検出となっているため、これを電気的コリメータと呼んだりする。そのため物理的に指向性のある光子検出をするたの物理コリメータ(コリメータ)は不要である。
以上、13〜15は成田雄一郎先生(京都大学)


16. 解答 d
ICRU report62によるとPTV = CTV + combined IM and SMと定義される。(ただしcombined IM and SMとは、IMとSMの単純な和ではない。) aとbはIM( internal margin )の構成要素、cとeはSM( set-up margin )の構成要素である。
dはCTVに影響する因子である。( CTVに影響すると間接的にはPTVにも影響するが、dを誤りとしないと正解がなくなってしまう。)

17. 解答 a
a. 誤: 腫瘍組織の中心部は低酸素状態であり、放射線治療に対し低感受性である。低酸素細胞が腫瘍組織の状態の変化によって酸素を含む細胞になることを再酸素化という。照射により腫瘍外側の酸素分圧の高い細胞が死滅すると、低酸素細胞のうち外側に位置するものは血管に近づき酸素が供給されて酸素分圧が高まる。再酸素化により放射線感受性は増す。
b. 正
c. 正
d. 正
e. 正

18. 解答 c
cは交替療法と訳され、化学療法と放射線療法とを交互に行なう治療法である。両者の施行時期をずらすことにより有害事象が軽減し、同時併用法と比較して化学療法のdose up が可能となる利点がある。一方で放射線療法にsplitが生じるため総照射期間が延長し局所制御率が低下することが懸念される。上咽頭癌などでは良好な治療成績も報告されているが、少なくとも現時点ではマイナーな治療法である。
ちなみにaとdは同義で放射線療法前補助化学療法、bは同時併用化学療法、eは放射線療法後補助化学療法であり、いずれの方法も広く用いられている。

19. 解答 c
半減期はCs-137:5.6年、Au-198:2.69日、Ir-192:73.8日、Ra-226:1600年である。

20. 解答a
a. 正: 前方と側方からの直交2門照射が最もよく用いられる。
b. 誤: 上顎洞癌はリンパ節転移の頻度が低く、一般的には頸部リンパ節領域の予防照射は不要とされる。(ただし上咽頭や鼻腔、口腔などリンパ流の豊富な部位へ進展している場合には、患側顎下から上・中頸部リンパ節への予防照射を行なうべきとする意見もある。)
c. 誤: T4aである。
d. 誤: 浅側頭動脈からの動注化学療法が一般的である。
e. 誤: 水晶体や視神経、脳幹など放射線感受性の高い臓器が近傍に存在するため、可能な限りset-up errorを少なくする努力をするべきであり、固定具を用いることが望ましい

以上、16〜20は中村直樹会員(東京大学)

21. 解答 e
a. 正:60歳以下と60歳超で分類され、60歳超で1点。
b. 正:血清LDHが高値で1点。
c. 正:Ann Arbor病期III、IVで1点。
d. 正:節外病変の数が2個以上で1点。
e. 誤:血清アルブミン値はIPIに含まれない。残りの1つはperformance statusで、2~4で1点。以上の予後因子を合計し、4段階のrisk group(0 = low risk、1~2 = low-intermediate risk、3~4 = intermediate-high risk、5 = high risk)に分類する。

22. 解答 e?
a. 正:厚生省がん助成金(阿部班)では1回照射を定位手術的照射(stereotactic radiosurgery: SRS)、分割照射を定位放射線治療(stereotactic radiotherapy: SRT)、両者の総称を定位放射線照射(stereotactic irradiation: STI)と定義している。
b. 正:脳幹、視神経、視交叉、視床下部等に接する病変では分割効果(晩期反応系正常組織に対する生物学的効果)を期待して、また3 cmを超える大きな病変はSRSでは投与線量が制限されて辺縁線量が低下するため、SRTが考慮される。
c. 正:病巣の直径が5 cm以内で転移病巣の無い原発性肺癌や3個以内で多病巣のない転移性肺癌は定位放射線治療ができる。
d. 正:聴神経腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、良性膠腫等の良性疾患も治療できる。
e. 誤?:ガンマナイフはコバルト60線源を半球面上に201個並べ、細いビーム状のガンマ線を頭部病巣に一点集中的に照射する装置で、金属フレームを頭蓋骨に直接固定するため分割照射は困難。直線加速器を用いた高精度3次元照射では、非侵襲的・着脱可能な固定具を用いることで分割照射が可能。用語の定義を厳密に適用するとこの選択肢が誤りか?

23. 解答 a, b
a. 正:脳腫瘍の遠隔転移の形式としては髄液を介して起こる髄膜播種が主で、血行性転移は稀。膠芽腫、悪性奇形腫、胚芽腫、上衣腫、悪性リンパ腫等でしばしば発生する。
b. 正:髄芽腫やPNETは高頻度で髄膜播種が認められる。
c. 誤:頻度は少ない。
d. 誤:これも頻度は少ない。
e. 誤:これも低頻度である。

24. 解答 c
a. 正:限局期小細胞肺癌に対する化学放射線療法において、45 Gy/30分割/3週の加速多分割照射は通常分割照射45 Gy/25分割/5週に比べて生存率が改善する。
b. 正:根治的放射線治療の適応であり、腫瘍制御のためには60 Gy/30分割/6週以上の線量が必要である。
c. 誤:放射線肺臓炎の予測因子として20 Gy以上照射される正常肺の体積V20があり、この値が正常肺の体積の40%を超えると致死的な放射線肺臓炎を起こすリスクが高くなる(Graham et al: Int J Radiat Oncol Biol Phys 45:323-329, 1999)。
d. 正:同時性化学放射線療法では急性有害反応が増強され、放射線食道炎や骨髄抑制などの頻度が高くなる。
e. 正:初期治療でCRとなった症例に予防的全脳照射(prophylactic cranial irradiation: PCI)を行うと脳転移率低下、生存率向上が得られ標準治療として推奨されている。

25. 解答 a
a. 正:末梢神経は放射線抵抗性であり、1回大線量照射や総線量が極端に大きい場合を除いて障害の生じる可能性は少ないと考えられる。
b. 誤:特に腔内照射を併用した場合は粘膜面に70 Gyを超える高線量が照射されるため、食道潰瘍の発生頻度が高くなる。
c. 誤:1回線量を高くした場合や、腔内照射を併用した場合に晩期有害事象として生じる可能性が高くなる。
d. 誤:照射野に肺が広範に含まれると時に重篤な放射線肺臓炎をきたすことがある。
e. 誤:根治的照射に伴い胸椎に晩期有害事象として病的骨折が生じることもある。

以上、21〜25は橋本孝之会員(筑波大学)

26.  解答 b
a:○ 上肢を挙上して接線照射(tilting technique,half field法)を行なう。
b:× 当然乳頭を十分含む照射野とする。
c:○ 腫瘍床へのブースト照射は乳房内再発のリスクを減少する。
d:○ 線源は60Coγ線や4MV,6MVなどのエネルギーのX線が望ましい。
e:○ 照射野の内側縁は胸骨正中線とし、対側乳房を含めない。

27. 解答 a(?)
[解説]
National Cancer InstituteのStageProstate cancerのPDQRでのstanderd treatment optionsでは、1.Radical prostectomy(c) 2.Careful observation(a) 3.External-beam radiation therapy 4.External-beam radiatiton therapy plus androgen-suppression therapy(b,e) 5.Interstitial implantation of radioisotopes(d)となっておりすべて許容されていると思われるが、現実的な回答としては(a)となると考える。

28.  解答 c
[解説]
放射線治療に併用される化学療法のレジメンはシスプラチン単剤もしくはシスプラチン+5-FUが広く用いられている。

29.  解答 d
[解説]
長期的な効果を期待する場合一回線量を2Gy程度とし総線量40-50Gyまで照射する(e)。
また欧米では30Gy, 10分割が良く用いられている(c)。
8Gy, 一回もしくは20Gy, 5分割でも疼痛緩和効果は同等であるとの報告がある(a,b)。
(Radiother Oncol 52: 101-109, 1999., Radiother Oncol 52: 111-121, 1999.)

30.  解答 b
[解説]
放射線治療の開始は手術当日もしくは翌日に開始し、電子線を用い15-20Gy程度照射する。

以上、26〜30は原島浩一会員(群馬大学)

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