放射線科専門医認定二次試験(診断・核)解答 1〜30

1.解答:なし
「妊娠した看護師の申し出から出産までの腹部表面の等価線量限度」とすべきであり、本問は問題の体をなしておらず失格。
仮に「等価線量限度」となっていたならば本人の申し出等により管理者が妊娠の事実を知った時から出産までの間につき2mSv(医療法施行規則第30条の27)で解答はb。

2.解答:b
a 正
b 誤: 特にこのような規定はない。他はすべて正しいので選ぶのはこれしかない。
c 正
d 正
e 正

3.解答:d
放射線物理学の初歩の問題であり、解説は不要と考える。

4.解答:c、e
a 誤 : 放射線業務従事者の年間許容限度は4月1日を始期とする1年間につき 50mSv。これに5年間ごとの縛りが加わる。
b 誤: 4月1日を始期とする1年間につき 50mSv、これの他に3ヶ月間につき5mSv。また「女性」の扱いが複雑であるがともかく誤り。   
c 正
d 誤: 教育訓練は必須であり免除されることはない。
e 正

5.解答:b、c、e(3つ該当)
a 正
b 誤: 病院や診療所その他これに準ずるものとして医療法人等が適切に管理する場所(中略)であること、という規定であり、保管場所が必ず病院または診療所でなければならないということではない。
c 誤:必要に応じて直ちに利用できる体制を確保しておくこと、という規定があるが、保管場所が必ず病院または診療所でなければならないという規定はない。
d 正 
e 誤: 診療録等の保存の義務を有する病院、診療所の責任において行う

以上、1〜5は 田中 淳司 会員(埼玉医科大学)

6.解答:c
画像所見:単純CTで、左前頭葉内側(上前頭回)に軽度の腫大がある。皮質の吸収値が低下し皮髄境界が不明瞭化している。
解説:病変は前大脳動脈領域に一致しており、急性期脳梗塞の初期虚血変化(early CT sign)と考えられる。髄膜炎では血管炎を合併すると梗塞を生じることがあるが、髄膜炎自体はCTでは評価できない。くも膜下出血の所見はない。神経膠腫は否定はできない所見であるが、Gliomatosis cerebriは2葉以上の大脳葉に浸潤する腫瘍であり、本症例の画像からは診断できない。CJDの初期は片側性の皮質病変が生じえるが、通常は両側性、びまん性の灰白質病変で、拡散強調像で高信号を示す。

7.解答:b
画像所見:拡散強調画像で、両側視床から後頭葉内側にかけて高信号を認める。左右対称な病変である。MRAでは、脳底動脈に径不同を認める。
解説:両側視床から後頭葉内側の病変であり、血管支配では両側後大脳動脈領域である。MRAで脳底動脈に径不同があり、高齢者であれば動脈硬化でも矛盾しないが、若年であるため解離が疑われる。脳底動脈解離による後大脳動脈領域の梗塞が生じたものと思われる。Galen静脈付近の静脈血栓症でも左右対称性の静脈性梗塞を生じえるが、本症例では拡散強調画像で血栓化した静脈の高信号を指摘できない。また、日本脳炎、Wernicke脳症、ミトコンドリア脳筋症では視床や後頭葉病変を認めるが、MRA所見が合わない。

8.解答:a、b
画像所見:内頚動脈造影側面像で、前大脳動脈の脳梁周囲動脈が拡張している。A4 segmentにてnidusと思われる拡張した血管網と連続し、背側に拡張・蛇行した流出静脈を認める。直静脈洞が描出されている。動静脈奇形と考えられる。
解説:動脈相での撮影であるが、直静脈洞が描出されており動静脈短絡があると考えられる。拡張しているのは前大脳動脈であり、皮質静脈の逆流は描出されていない。導出静脈は1本で、直静脈洞に連続している。

9.解答:d
画像所見:右小脳橋角部に拡散強調画像で強い高信号を認める。T1強調像やT2強調像では髄液と等信号を示しており、右三叉神経が偏位しているように見える。
解説:拡散強調像で強い高信号を示す嚢胞性病変であり、類表皮嚢胞である。クモ膜嚢胞では拡散強調像で高信号とならない。髄膜腫の信号パターンとしてもかなり非典型的で、微小嚢胞性髄膜腫などはあるえるが、拡散強調画像で強い高信号を示すことはないと思われる。病変はクモ膜下腔に存在しており脳膿瘍という診断はナンセンスと思われる。動静脈奇形を示唆する異常血管も認められない。

10.解答:e
画像所見:橋が腫大しており、T2強調像やFLAIR像で軽度の高信号を示している。両側小脳上面や右側頭葉白質にも軽度の高信号が見られる。拡散強調画像では明らかな異常信号を認めない。
解説:拡散強調画像での異常を伴わず、急性期脳梗塞は否定的で、脳幹脳炎としても非典型的と思われる。脳幹部の神経膠腫は小児から青年期に多い。血圧が高いことから高血圧性脳症(PRES)が疑われる。橋中心性脱髄(CPM)では橋の辺縁部分が保たれることが多い。

以上、6〜10は 工藤 與亮 会員(北海道大学病院)

11.解答:b
CTにて松果体近傍に白質より高吸収、皮質と同程度のdensityの軟部影が認められる。MRI矢状断像では松果体に接して軟部影が認められ、下垂体柄〜下垂体にかけても軟部影が認められる。
結核の中枢病変は肺結核患者の2〜5%に見られる。結核性髄膜炎、膿瘍、脳炎、結核腫と多彩な形をとるが、髄膜炎が最も多い。脳底部髄膜の肥厚・濃染が最も良く見られ、脳槽に結核腫を形成することもある。また、血管炎を好発し、穿通枝領域に梗塞が見られることも多い。下垂体や下垂体柄に肉芽を形成し尿崩症をきたすこともある。
胚種は松果体が好発部位の1つであり(70%)、鞍上部にも好発する(30%)。CTでは細胞密度を反映し高吸収を示すことが多い。松果体部の胚腫は男性に好発するが(10:1)、鞍上部は性差がほとんど見られない。鞍上部に生じる場合は、中枢性尿崩症の原因となることがある。多発することもあり、画像上は最も疑われる疾患である。
神経膠腫は原発性脳腫瘍の25.2%を占めており、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡叢系腫瘍などが含まれる。これらのうち上衣腫や脈絡叢乳頭腫などが鑑別に上がるものの、胚腫よりも考えやすいことは無い。
原因不明の炎症性疾患であり、組織学的には非特異的リンパ球浸潤が認められる。前葉(腺下垂体)のみ侵すもの、後葉〜下垂体柄(神経下垂体)のみ侵すもの、両方侵すものなどさまざまな形態を示す。中枢性尿崩症の原因のひとつである。
LCHの頭部病変としては頭蓋骨浸潤が有名。また、中枢神経浸潤を生じることもあり、下垂体柄や視床下部に浸潤した場合は中枢性尿崩症の原因となることもある。
頻度などを考慮すると、答えはb)胚腫が第一に挙げられる。

12.解答:e
内包後脚に淡いT2高信号が認められ、大脳脚にも同様の高信号域が認められる。
CO中毒では海馬や淡蒼球の壊死、白質の壊死・脱髄が認められる。MRIではそれらを反映した所見を呈する。また、側脳室周囲白質、脳梁、半卵円中心にも異常信号がみられることがある。病変の分布からは否定的。
肝性脳症は淡蒼球を中心とした基底核のT1高信号が有名。その他、被殻、内包、大脳脚、下垂体などでも見られることがある。銅やマンガンなどの微量金属元素の沈着が原因とされる。
多発性硬化症は白質の脱髄病変ではあるが、側脳室周囲深部白質に生じることが多い。また、今回のように錐体路に限局した画像を呈することはない。
ビタミン12欠乏症は不適切なダイエット(菜食主義)、内因子欠乏(慢性胃炎・胃切除・先天性内因子欠乏症)、小腸疾患(小腸切除・クローン・吸収不良症候群・腸結核など)、笑気ガス吸入などが原因で生じる。Vitamin B12欠乏症に関連した有名な神経疾患としては、亜急性連合変性症がある。1万人に1人に割合で発症し、40歳以上の人に好発する。主に脊髄側索や後索が中心として障害され、錐体路症状や知覚障害を生じる。また、中枢神経や末梢神経も障害される。臨床的には筋の脱力と感覚障害をともなう左右対称性の知覚運動性の多発性神経障害が見られる。画像所見はMRIでは脊髄の側索および後索にT2高信号が認められ、中枢神経では錐体路や小脳に異常信号がみられるとの報告がある。画像上は亜急性連合変性症としても矛盾はしないが、今回の症例は錐体路症状のみで、感覚障害については言及されていない。以上からはALSの方が考えやすいと思われる。なお、この疾患に関しては血清Vitamin B12濃度を測るのが必要であり、画像のみで診断させるのは少し無理がある。
筋委縮性側索硬化症(ALS)は上位および下位運動ニューロンが選択的に障害される神経変性疾患であり、年間に人口10万人当たり2人程度が発症する。好発年齢は40代から60代で、男女比は2:1である。感覚障害や眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥創などは呈さない。発症初期では特異的な画像所見を呈さないことが多いが、病期が進行するにつれ内包後脚(錐体路)がT2強調画像で高信号を呈することがある。なお、一般的にALSにおいては中枢神経の画像検査は除外診断に用いられる。
以上より、d)かe)か迷う部分もあるが、答えはe)ALSを第一に考えたい。

13.解答:b
中下位胸椎レベルの脊髄はT2WIにて腫大および高信号化を呈している。脊髄背側に接して小さなflow voidが多数認められ、硬膜脊髄動静脈瘻がもっとも疑われる。
硬膜脊髄動静脈瘻はT5−L3に最も多く、他の部位の血管奇形は伴わない。頭部MRIおよびMRAは施行しても良いが、血管造影との二者択一であれば優先順位は低くなると考える。
確定診断およびその後の血管内治療のため必要である。次に行うべき検査で最も優先順位は高い。なお、最近ではCTAによるfedderの同定も可能になっており、選択肢にCTAがある場合は次に行う検査と考える。
myelomalaciaを反映してわずかに集積が低下しているかもしれないが、特異的な追加情報は乏しい考える。また、保険適応からも外れている。
有用性がないと思われる。
腰椎穿刺をしても追加すべき情報は得られない。
以上からは答えは第一にb)血管造影を考える。

14.解答:e
上咽頭正中に嚢胞性病変が認められる。T2強調画像にて高信号、T1強調画像にても筋よりやや高信号を示している。特徴的な部位や形態からはTornwaldt嚢胞が考えられる
咽後膿瘍は形態・部位より否定的。
アデノイドは咽頭扁桃の肥大から鼻咽腔の閉塞症状を呈するものである。CTでは均一な鼻咽腔を占める左右対称性の軟部組織としてみられ、MRIではT1で筋と等〜やや高信号、T2で高信号を示し、造影にて内部に線状の造影効果がみられる。
鼻咽腔に発生する悪性腫瘍の中で上咽頭癌に次いで多い。CTでは筋とほぼ等吸収、MRIではT1にて筋とほぼ同等、T2にて均一な高信号を示す。造影T1では軽度から中等度の均一な濃染を示す。辺縁は平滑で境界は明瞭なことが多い。
海面状血管腫は著明なT2高信号を呈し、T1強調画像では筋と同程度か僅かに高信号を呈する。CTでは筋と等濃度を示し、石灰化を伴うことがある。
Tornwaldt嚢胞は咽頭粘膜間隙正中に発生する先天性嚢胞で、通常無症状で偶発的に認める事が多い。脊索の遺残として発生し、3〜4%に見られる。画像では、鼻咽頭正中後壁で、椎前筋と咽頭縫線との間に存在し、数mm〜数cmの大きさ。内容液はT1強調画像にて、蛋白濃度により低信号から高信号まで様々な信号を呈する事が特徴。時に出血や感染を伴うこともある。
特徴的な画像所見より、答えはe)Tornwaldt嚢胞と考える。

15.解答:b
Retropharyngeal spaceからcarotid spaceにかけて辺縁のsmoothな楕円形の腫瘤が認められる。T1にて低信号、T2にて不均一な高信号を示し、造影にて不均一な濃染が認められる。
髄膜腫は脳表のくも膜顆粒から発生し大半は組織学的に良性で予後良好。55〜65歳の女性に多い。Retropharyngeal spaceに発生することは稀。
神経節神経種は胎生期のprimitive neural crestに由来する副腎や交感神経節から発生する腫瘍のうち最も良性な腫瘍である。被膜を持つことが多く、悪性転化や転移は非常にまれである。サイズの割に無症状のことが多い。CT値は低く15-45HU程度を示し、石灰化を伴うこともある。また、MRIでは細胞密度に応じてT2WIにて不均一な信号を呈し、造影にても様々な濃染を示す。交感神経幹から発生することが多いが、副腎髄質にも発生しうる。
迷走神経は頸部では内頚静脈−総頚動脈の間やや後方に位置している。このため、迷走神経鞘腫は動静脈を前方に偏位し、内頚静脈−総頚動脈を離開する傾向がある。また、濃染も神経鞘腫としては少し乏しいと思われる。
胎生期のprimitive neural crestに由来する副腎や交感神経節から発生する腫瘍のうち悪性度が最も高い腫瘍である。大部分は10歳以下に生じる。MRIではT1低信号、T2高信号であり、造影にて不均一な濃染を示す。副腎発生が多いが、髄外発生部位としては後腹膜や縦隔が多く、頸部や骨盤にも発生することがある。
迷走神経糸球傍神経節種は非常に血管に富み、強い増強効果を示す。この点において今回の画像は少し合致しない。
以上からはb)神経節神経腫が最も疑われる。

以上、11〜15は 松島 成典 会員(京都府立医科大学)

16.解答:e
与えられた画像は、膝単純X線写真側面像、膝 (大腿骨遠位レベル) MRI T1強調およびT2*強調横断像の3コマである.
単純X線写真において、異常石灰化・硬化性変化や溶骨性変化はみられない.MRIでは、関節腔に液体貯留を認める.滑膜はT2*強調画像で低信号を呈しており、出血によるヘモジデリン沈着を示唆するものと思われる.滑膜が出血に由来する低信号を呈する疾患として、血友病・関節リウマチ・色素性絨毛結節性滑膜炎が挙げられる.
血友病の出血の多くは関節内にきたし、膝関節は好発部位のひとつである.本例は血友病を否定できないが、好発年齢は20歳以下 (大人の身体が完成するまで) である.
滑膜肉腫は膝関節周囲に好発するが、傍関節軟部組織 (腱鞘) 発生であり、関節腔発生は稀である.
関節リウマチは、X線写真において種々の所見を呈する.本例は30歳代で膝関節に初発とすると、中年の指趾関節に初発する両側性・多関節痛という特徴とは合致しない.
滑膜骨軟骨腫症は、若年から中年の膝・股・肘関節に好発する、関節内軟骨形成である.MRIでは骨化・石灰化の程度により、滑膜下・関節腔内に充満する特徴的な多数の低信号結節影を呈し、本例の画像所見とは合致しない.
色素性絨毛結節性滑膜炎は、血友病や石灰化を伴わない滑膜骨軟骨腫症と鑑別困難であるが、本例の画像所見はこれに矛盾しないものと思われ、好発年齢 (20-40歳)も本例に合致する.

17.解答:d
与えられた画像は、MRI T1強調およびT2強調冠状断像・横断像の4コマである.
肩関節周囲にT1強調画像・T2強調画像ともに低信号を呈する腫瘤影を認める.上腕骨頭には軟骨下嚢胞を認める.
本例は長期透析歴があり、画像所見もアミロイド関節症に矛盾しない.

18. 解答:e
与えられた画像は、股関節MRI T1強調および脂肪抑制T2強調冠状断像の2コマである.
右大腿骨頭から小転子レベルにかけて、T1強調画像にて低信号、T2強調画像にて高信号を呈するやや不均一な異常信号域を認め、骨髄浮腫が疑われる.外傷の既往や感染徴候の明らかではない大腿骨頭の骨髄浮腫をみた場合、大腿骨頭壊死・疲労骨折 ( 軟骨下脆弱性骨折 )・一過性大腿骨頭骨粗鬆症を考える.本例では前二者に特徴的な低信号帯を認めず、一過性大腿骨頭骨粗鬆症が最も疑われる.
一過性大腿骨頭骨粗鬆症は以前は妊娠中の女性に好発すると言われていたが、最近は中高年男性に多いとされ、本例も合致する.

19. 解答:e
与えられた画像は、足単純X線写真正面像の1コマである.
画像所見を強いて挙げるとすると、MP関節周囲の不整な骨濃度減弱が疑われる.IP関節裂隙の狭小化も疑われるが、病的所見かどうか不明である.( この画像所見で正しいかどうか、全く自信がない.)
痛風は高齢者よりも青壮年期の男性に好発する.本例の第5趾MP関節にびらんを疑わせる所見は痛風を否定できないが、痛風に特徴的とされる骨硬化縁は不明である.また本例では、軟部組織に高吸収および石灰化を呈する痛風結節を指摘できない.
結核による関節炎は、関節リウマチに類似する ( 関節リウマチと異なり、関節裂隙は比較的保たれる ) が、好発部位は大関節である.
糖尿病患者の足は、Charcot関節の好発部位である.Charcot関節の典型例はLisfranc骨折であるが、本例にそのような関節破壊・脱臼・異所性骨新生はみられない.
強皮症の手指では、遠位指節骨の骨吸収および軟部組織の石灰化が特徴的とされるが、本例ではこれに合致する所見があるかどうか不明である.
関節リウマチの所見は、軟部組織腫脹・骨粗鬆症・関節腔狭小化・辺縁性びらんであり、本例は比較的よく合致するものと思われる.

20.解答:c
与えられた画像は、膝MRI T2強調冠状断像および矢状断像の2コマである.
冠状断像において、正常の内側半月板に相当する低信号構造は存在せず、内側関節裂隙を関節液貯留と思われる高信号が置換している.顆間部に変位した内側半月板 ( 断裂片 ) が描出されている.矢状断像では、いわゆるdouble PCL signを呈しており、内側半月板のバケツ柄断裂と考えられる.

以上、16〜20は 濱田典彦会員(高知大学放射線医学教室)

21. 解答:d
心陰影に重なって三角形の不透過域を認める.下行大動脈は途中で追えず、左傍椎体線も消失している.また左横隔膜が途中で追えなくなっている.典型的な左肺下葉の無気肺の所見と思われる.

22. 解答:a
『70歳代の男性、39度の高熱、ポータブル胸部X線写真』との事で呈示された画像もやや見辛いが、高齢者が高熱を主訴に来院した場合、粟粒結核の可能性は常に念頭に置いておく必要はあると思われる.呈示されたX線写真では両側上肺野に淡い小結節や小輪状影(もしくは空洞影)を多数認めるようで粟粒結核を疑いうる.

  • 肺炎球菌は最も一般的な肺炎の原因菌であり、肺野に浸潤影(肺胞性陰影)を認める事が一般的である.
  • アスペルギルス症は日和見感染の中で最も多く見られる真菌症であり、浸潤性壊死性肺炎を引き起こす.しばしば空洞形成を来し“air crescent sign”は本症に特徴的と言われている.
  • インフルエンザ肺炎(インフルエンザウイルスによるウイルス性肺炎)はCTですりガラス状陰影が主体であり、初期は胸部X線写真で同定し難いこともある.
  • ニューモシスチス肺炎は免疫不全患者における最も重要な肺炎であり、CTで両肺にびまん性のすりガラス影を呈するが、胸膜直下は保たれることが多い.発症初期は胸部X線写真では同定し難い.

23. 解答:c
右肺下葉S6bの肺野中間層に辺縁不整な結節影を認める.陰影の辺縁部には毛羽立ち像や胸膜陥入像が見られる.10日後のHRCTでは陰影の形状が変化しているようで、細気管支周囲に微小結節が集簇して陰影を形成しているようにも見える.出題された画像は肺野条件のみであるが、右肺門部には腫大リンパ節が存在すると思われ、サルコイドーシスが最も考えられる.

24. 解答:d
20歳代の男性、持続する咳嗽、そして胸部CTで両肺に比較的明瞭な薄壁を有する大小多数の嚢胞状陰影を認める.呈示された画像からは病変は上肺野優位と考えられる.

  • 肺気腫は縁取りのない、あるいは壁の見られない無構造の低吸収域として認められるが、小葉中心性肺気腫では壁が僅かに見えたり、血管に縁取られることはある.
  • 転移性肺腫瘍で空洞形成を見るものでは扁平上皮癌、肉腫、大腸癌、悪性黒色腫、移行上皮癌などが教科書的に挙がるが、肺転移によって咳嗽が持続するということは一般的な症状とは言えず、20歳という年齢からも肺転移を鑑別の1番には挙げ難い.
  • 特発性器質化肺炎(COP/BOOP)は斑状のすりガラス影やconsolidationが典型的な像であり、所見的に合致しない.
  • Langerhans細胞組織球腫症のうち、eosinophilic granulomaは、初期は1〜5mm程度の小結節が多発するが、その後、薄壁を有する嚢胞を形成し、末期には肺線維症に至る.喫煙との関連が深く、男性に多く、20〜40歳代が好発年齢であることなども本例に合致する.
  • 過誤腫性リンパ管筋腫症は、多発する嚢胞状陰影という点で呈示された画像に一致すると思われるが、ほとんどが妊娠可能な女性である.

25. 解答:a
60歳代の女性が腹腔鏡下腎摘出術直後から低酸素血症を来した.発症時の胸部X線写真(ポータブルと思われる)では両側の肺尖〜上肺野優位に淡い浸潤影を認めており、両側の肺門影も腫大している.これらはいずれも10日後には改善している.

  • 肺胞出血はSLEに合併するものがよく知られているが、胸部X線像では両側肺野の融合影・浸潤影を主体とし、典型的には肺尖部や肋骨横隔膜角は保たれる.
  • 脂肪塞栓症は急性呼吸促迫(窮迫)症候群(ARDS)の原因として挙げられ、手術直後から低酸素血症を来した経過からも疑いうる.またX線像もARDSを疑いうる.
  • 左心不全(急性)は心原性ショックから肺毛細血管透過性亢進を生じ、肺水腫を来しうる.教科書的には心不全に伴う(肺胞性)肺水腫はbutterfly distributionが知られており、呈示されたX線写真は比較的末梢側優位に陰影が存在するように思えるが可能性はある.また発症時と10日後で心拡大がやや軽減しているように見える(発症時はポータブル、10日後は通常の立位正面像と思われるため安易に比較できないが…).
  • 神経原性(非心原性)肺水腫はくも膜下出血などの中枢神経系異常に引き続く著明な交感神経系の興奮に伴う肺うっ血、肺毛細血管透過性亢進により肺水腫を発生する.意識障害等の記載はないがX線像は肺水腫も疑いうる.

選択枝上は肺胞出血が他の疾患に比べてやや可能性が低いと思われる.

以上、21〜25は 寺崎 洋 会員(社会保険久留米第一病院放射線科)

問26

  1. 診断所見:右胸膜にdenseな石灰化が見られる。慢性膿胸腔そのものは描出されていない。接して比較的強い増強効果を呈する軟部腫瘤を認める。胸腔由来か肺由来かは不明。一般に線維肉腫の増強効果は低い。末梢由来の肺小細胞癌はroundで平滑な形態を呈することが多い。慢性膿胸では悪性腫瘍が合併しやすく、悪性リンパ腫、扁平上皮癌、悪性胸膜中皮腫、血管肉腫の順に見られる。右側脊柱起立筋が対側より腫大し、均一な増強を呈している様に見える。腫瘍性とすれば骨破壊を伴わず、浸潤性発育と考えられ画像的にも悪性リンパ腫が鑑別の最上位に位置する。頻度、所見からdの優位は揺るがないが、2つめは頻度を考慮した。
  2. 解答:c, d
  3. その他、意見等:慢性膿胸そのものは描出されていないものの、胸膜炎の既往からこれを意図した出題と考えた。所見のほか、頻度を考慮させた点でpracticalな出題となっており良問と思う。

問27

  1. 診断所見:胸部単純X線写真では心陰影に重なる平滑な辺縁を呈する腫瘤影を認める。造影CTでも平滑でroundな辺縁を呈する腫瘤を認める。内部は縦隔から線状に伸びる高吸収と樹枝状の低吸収を認める。脂肪組織や腸管ガス像は認めない。腫瘤内部構造は脈管、気管支樹枝構造を反映すると考えられる。腫瘤の平滑な辺縁は胸膜面を反映していると考えられる。
  2. 解答:b
  3. その他、意見等:縦隔側(大動脈側)から外側に向けて伸びる脈管構造が確認出来れば診断は容易と思われる。

問28

  1. 診断所見:気管下部レベルの、特に右側縦隔陰影の突出が目立つ。肺内には局在病変やびまん性陰影は確認出来ない。造影CTでは気管右側の腫大リンパ節が目立つ。リング状増強を呈している。画像的には結核性リンパ節炎が考えられる。鑑別には上皮系悪性腫瘍のリンパ節転移でもあり得る所見である。サルコイドーシスとしては非典型的である。頻度は低くても30歳代であれば悪性腫瘍を考慮しない訳にはいかない。簡便さ、検査手順としてはHIV抗体価の測定より腫瘍マーカー測定が優先される。一方で、免疫不全状態での結核症は日和見感染として重要であり、そういう意図であれば、それに従った組み合わせを選択する。
  2. 解答:a, eもしくはb, e
  3. その他、意見等:何を「有用」と判断するかで答えが分かれると思う。そういう意味では職業歴も一定の情報を与えるため有用と言える。

問29

  1. 診断所見:前縦隔に大きな腫瘤を認める。比較的均一ながら一部に低吸収を有する。大血管は背側に圧排されている。
  2. 解答:a
  3. その他、意見等:画像的には特異性に乏しく、疾患の好発年齢だけが鑑別となり得る。胸腺癌は中高年に多い。

問30

  1. 診断所見:左肺は軟部陰影により充満しておりいわゆるCT angiogram sign、air bronchogram が見られる。肺容積は軽〜中等度に減少している。部分的に気腔が残ったり軟部陰影内に限局性の低吸収領域が認められる。肺膿瘍部分を一部に混在している可能性は高いと思われる。大葉性肺炎、閉塞性肺炎ともに本質的に同じであり不可分である。肺胞上皮癌で粘液を産生するタイプであれば十分にあり得る。但し臨床的な頻度としての可能性は高いとは言えない。また、悪性リンパ腫に関しても同様である。しかしながら、疾患リストを見る限りは、画像パターンとして肺膿瘍が異質である。
  2. 解答:a
  3. その他、意見等:腫瘍であっても感染の併発は多いので喀痰検査や気管支内視鏡検査に診断を委ねなければならず、質的診断における画像の役割は低い症例である。

以上、26〜30は 黒木正臣 会員(宮崎大学医学部)

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