|
27. 解答 d
肝膿瘍の治療は,内科的保存療法が原則である。初期には抗生剤投与による経過観察が一般的であるが,この症例のように,嚢胞変化を起こすような時期では,抗生剤投与が無効なことが多く,ドレナージチューブ挿入による内容液排泄が必要である。
診断所見:肝右葉に単純CTで境界不明瞭な低濃度域を認める。造影CTでは周囲は被膜様によく造影されるが,内部の造影効果は明かでない。
診断プロセス:内部は造影されないことから,嚢胞性病変であることがわかる。ただし,周囲によく造影される部分が見られることから,この嚢胞性に部分は腫瘤内の二次的な変化(壊死,出血など)によるものと考えられる。臨床経過は,感染が存在することを示唆しており,臨床情報を加味すれば,肝膿瘍の診断は容易である。
鑑別診断の必要性:臨床情報がその診断に重要な疾患であり,本症例のように感染が明らかであれば,診断は容易である。しかし,このような臨床情報に乏しい場合は,中心壊死や出血などにより,二次的に嚢胞変性を起こす転移性腫瘍や乏血性の胆管細胞癌との鑑別が重要となる。また,初期の嚢胞形成があまり強くない,または嚢胞形成を見ない時期では,非特異的なCT像となり,他の全ての充実性腫瘍との鑑別が必要となる。
28. 解答 c
診断所見:肝左葉外側区域全体をしめる腫瘤が認められる。造影前後のCTでは,腫瘍は正常肝実質とほぼ等濃度,造影効果を示す。被膜の存在は明かではない。単純CTでは,腫瘍の中心に不整形の低濃度域をみるが,造影後は不明瞭化している。肝コロイドシンチグラムでは明かな欠損域は認めない。
診断プロセス:肝コロイドシンチグラムで "hot spot" となる腫瘍として,選択肢内では限局性結節性過形成(FNH)と肝細胞腺腫が挙げられる。単純CTで腫瘍中心に見られる低濃度域は,いわゆる
FNH で見られる"central scar"に典型的な像である。 この central scar を除けば,肝細胞腺腫としても矛盾はしないが,一般に,肝細胞腺腫は経口避妊薬など薬剤投与との関係が強い。
鑑別診断の必要性:肝コロイドシンチグラムでの取込み像とCTでの central scar から診断は容易である。 肝コロイドシンチグラムで
"hot spot" となる腫瘍としては他に,肝細胞腺腫と高分化型肝細胞癌が挙げられる。前者は FNHと同様,通常は被膜を持たないが,上述したように経口避妊薬など薬剤投与との関係が強いことから,もう少し年齢層の高い女性に多い。後者は肝炎ウイルス感染による肝硬変の存在が明かでなく,年齢も低すぎることから容易に否定される。
29. 解答 c または e
診断所見:肝右後下区域に高エコーを呈する結節が存在する。CTAP の初期像では,肝右後下区域に結節様の染まり抜けが見られるが,後期像では結節と周囲肝実質との区別は困難である。
診断プロセス:CTAPの初期像と後期像というものがどの程度の時間で撮られたものか解らない以上,診断は困難である。
意見:全く不適切な問題と思われる。もし,CTAPの後期相がかなり遅い(2分以上の)ものであれば,門脈血流を受けない(動脈血支配の)病変であれば,なんでも良いということになる。その場合,高エコーであることを考えると,答えはc,d,(一部の
e)ということになる。おそらく,後期相で門脈本幹および肝内門脈が強く染まっていることから,後期相といっても1〜1.5分程度の時期の写真と考えるが,その場合でも,e
のほかに c も完全には否定できない。double-phase CTAP で高分化型肝細胞癌が早期相と後期相で見え方が違うという論文があり(Ichikawa
T, et al. Radiology 1996; 198: 284-287.),この例もおそらく意図としては e が解答(後期相CTAP
で結節内に濃染する門脈枝が存在する所見もあるので)ということなのだろうが,CTAPの撮像タイミングがしっかり示されていなければ,正解を限定するのは難しい。
30. 解答 c
診断所見:左図を正面像と見るとすると,胆嚢内腔を示す高信号域は不規則構造を示していると考えられる。胆嚢内には結石と考えられる低信号構造を認める。右図が胆嚢と考えると内腔周囲に肥厚した壁と考えられる淡い高信号帯が認められ,壁内に嚢胞状,数珠状を示す高信号域が散在している。総胆管には明かな異常は認められない。
診断プロセス:肥厚した胆嚢壁内部に増殖する小嚢胞様の高信号域は拡張したRokitanski-Ashoff sinus(RAS)と考えられ,正解は
c の胆嚢腺筋症ということになる。拡張した RAS と胆嚢壁のびまん性肥厚に気づけば診断は比較的容易である。
鑑別診断の必要性:胆嚢壁内の拡張した RAS の所見はこの疾患に特徴的であり,鑑別診断は特に考えなくてもよい。
意見:問題の多い出題と考えられる。まず,MRCPがどの方向から撮られたものか,まったく記載がないのはおかしい。さらに写真は決してきれいなMRCPではなく,拡大も強すぎて,周囲構造や細かな所見からこの構造を同定するのは困難である。MRCPを多方向から撮像する場合,左図の胆嚢と思われる部位に膵管が位置することもあり,その場合,拡張した主膵管と考えられなくもない。選択肢は,結局のところこの構造を胆嚢と考えるか主膵管と考えるかで,答えがbかc
か決まるので,MRCPの画像所見というより,撮られた画像の方向を推定することがこの問題の解答となる。本来,CTにしても MRI
にしても解剖(形態)学なのだから,ちゃんと撮像方向は事前に呈示し所見を読ませるのが筋である。
(以上27〜30は山梨医科大学・市川智章会員)
31. 解答 a
診断所見:造影CTにて膵臓は全体に腫大しており,体部を中心に low attenuation を呈している。また,周囲の脂肪織の
attenuation は不均一に上昇しており,炎症が波及しているものと思われる。炎症は anterior pararenal
space に限局しており,peri renal space へ進展は見られない。膵頭部には明らかな腫瘤の形成はなく,主膵管の拡張は見られない。また,膵実質に石灰化は認めない。
診断プロセス:膵臓には明らかな腫瘤(嚢胞性および充実性ともに)形成は見られず,c 膵仮性嚢胞,d 膵腺癌,e 膵充実性嚢胞性腫瘍は否定される。b
慢性膵炎では膵臓の実質は萎縮し,石灰化を有することが多いので,これまた否定的である。病歴は大量飲酒後の腹痛であり,a 急性膵炎の原因として胆石を含む胆道疾患と並んで多い病歴である。
・画像も急性膵炎として典型的であり,厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班のまとめた急性膵炎のCT grade分類では,この症例はGrade
III に相当するものと思われる。
32. 解答 d
診断所見:単純CTにて膵尾部に膵実質に比して low attenuation を呈する腫瘤を認める。石灰化は見られない。腫瘤は造影CTでは膵実質に比して増強効果は弱いものの内部に淡い増強効果が見られ,辺縁および内部に線状の比較的明瞭な増強が見られる。悪性を思わせる不整像には乏しい。MRCPでは
hyperintensityを呈しており,隔壁構造を有し小嚢胞集簇様に見える
・膵管自体の拡張は見られない。DSAでは静脈相にて腫瘤に一致した tumor stain を認める。
診断プロセス:症例は無症状であり膵尾部の腫瘤ということからa腫瘤形成性膵炎は否定出来る
・Hypervascular な膵腫瘍としてはb非機能性膵島腫瘍,d膵漿液性嚢胞腺腫,e膵充実性嚢胞性腫瘍が挙げられる。そのうちeは若い女性に好発し,内部には腫瘍の出血壊死に伴う二次的変化としての嚢胞形成が見られる。bは膵島腫瘍はhypervascular
tumor として知られており,20%程度に石灰化を伴う。dの漿液性嚢胞腺腫は60歳以上の男女に見られしかも極小の嚢胞が集まって腫瘍を形成していることから,超音波では充実性のパターンをとることが多く,腫瘍内の間質に豊富な毛細血管のネットワークが発達しているので
hypervascular な腫瘍として描出される。膵の hypervascular mass として年齢を考慮すれば,eの可能性は低く,MRCP所見を優位にとれば,dの可能性が一番高いと考えられる。
33. 解答 c
診断所見:単純CTにて左腎周囲に high attenuation を呈する病変を認め,それはperirenal space
に限局して存在している。左腎自体は対側腎と isoattenuationである左腎は腹側へ偏位しており,背側でごく軽度の変形を認めるのみである。
診断プロセス:左腎周囲の high attenuarion は単純CT であることから hematoma と考えられ,a
腎嚢胞 (単純性),d 尿瘤 (urinoma),e Wilms 腫瘍は除外される。b 腎動脈茎部損傷では hematoma
の主座が perirenal space で背側寄りであることから考えにくい。ちなみにこれが造影CTであれば,dの可能性は残る。
34. 解答 a または d
診断所見:RPにて左下腎杯の描出は不良で同部に一致して不整形の病変を認める。 filling defect を描出しているものなのか,石灰化を表現しているのか,RP撮像前の単純写真がないので定かではない。中部腎杯,上腎杯には軽度の
blunting が見られる。また,左上部尿管には半円形の filling defect が見られる。
診断プロセス:非常に悩ましい問題である(と思う)。選択肢のうちまず除外されると思われるのは,c 海綿腎である。拡張した集合管の描出のため腎杯部から連続してハケで書いたような細かい線状影が見られる。b
腎乳頭壊死では壊死部はfilling defect として描出されるが,下熱鎮痛剤の乱用者に多く,若い年齢に多く,可能性は低いと考えられる。e
慢性腎盂腎炎は腎杯の変形があり,腎実質が菲薄化してくるのが特徴で,この症例では腎実質の contour がはっきりしないため,否定する根拠は見られない。下腎杯の所見を
filling defect とし,尿管の filling defect と合わせれば,d 腎盂癌の可能性が挙がり,また,下腎杯の所見を石灰化ととれば
a 腎結核の可能性が挙がる。ただ,結核の場合尿管は全周性の狭窄が見られることが多く,それを考慮すれば d か???
(以上31〜34は佐賀医科大学・土井順子会員)
35. 解答 a
a. 腎細胞癌:○
b. 腎嚢胞:×
c. 黄色肉芽腫性腎盂腎炎:△
d. 腎梗塞:×
e. 重複腎:×
画像所見:右腎内部に不規則に造影される4〜5B程度の円形の腫瘤像を認めている。腎の表面は連続しているがやや外方凸に変形している。
解説:この所見より,一般的に否定的となる選択肢は,b ,d ,e の3つであろう。鑑別で迷うとすれば,a か c である。実際,黄色性肉芽腫性腎盂腎炎はびまん型
(global type)と局所型 (focal type)があり,びまん型はサンゴ状結石や造影でrim enhancement
を呈するので判断し易いが,局所型と腎癌の鑑別は画像上困難とされている。ただし,黄色性肉芽腫性腎盂腎炎は中年女性に多いグラム陰性菌による疼痛,体重減少をきたし易い疾患とされている。解答は
a とした。
36. 解答 c
a. 子宮脱:×
b. 子宮腺筋症:△
c. 子宮筋腫:○
d. 子宮内膜癌:×
e. 子宮頚癌:×
画像所見:子宮体部と頸部の境界背側に正常筋層よりやや低信号の腫瘤。腟内にも同様の低信号を示す腫瘤を認める。
解説:一般的にT2強調画像で低信号なのは筋腫と腺筋症。内膜癌と頚癌は高信号である。子宮脱は解剖学的に脱出しているか否かである。鑑別点として,腫瘤内の高信号パターンに注目すると,腺筋症で有る程度大きくなったものは異所性出血や内膜を示すので点状の高信号を認めるが,本例ではむしろ渦巻き状模様のような物が見えており,これは筋腫に特徴的である。さらに腟内の低信号腫瘤が筋腫分娩ではないかと考え,解答は
c とした。
37. 解答 a
(1) 食道静脈瘤破裂:◯
(2) 脾動脈瘤破裂:◎
(3) 脾膿瘍:△
(4) 門脈血栓症:×
(5) 脾血管腫:×
画像所見:脾動脈瘤と早期静脈潅流があり動静脈瘻形成の所見である。
解説:外傷性動脈瘤の場合 false aneurysm で破裂する可能性があり,また門脈圧亢進症も合併するため,手術適応がある。長期的に見れば門脈圧亢進症から食道静脈瘤に発展するのは破裂の有無はともかく自然であろう。小児の外傷性脾動脈瘤は希であるが,Pediatric
Radiology誌のVo.l26 No.3に13歳女児の症例報告があり本例と極めて類似していたので参考とした。この報告では受傷2週間のエコーで脾の
subcapsler hematoma があり,退院後エコーで経過観察中,受傷後4ヶ月目に動脈瘤が発見されている。この報告例などから脾膿瘍は順番として動脈瘤が形成される前であり,それが治まってから動脈瘤が形成されると考えた方がよさそうである。解答は
a とした。
(以上35〜37は埼玉医科大学・比企太郎会員)
38. 解答 c
本症例のように,腹腔動脈造影で発達した膵十二指腸アーケー(pancreatico-duodenal arcade)を認め,それを介して上腸間膜動脈が描出されてる場合は,一般に,なんらかの原因(腫瘍浸潤,動脈疾患等)により,上腸間膜動脈起始部が閉塞ないしは高度狭窄をうけている。
39. 解答 b
固有肝動脈造影で両葉に hypervascular tumor(肝細胞癌)を多発性に認める。なくとも左葉のものは,径3cm
を越えているようである。
a. ○ 両葉に存在する多発性肝癌であるので,一般的に肝切除術は困難である。
b. × 総ビリルビン 3.0mg/dP 以上またはCh-E120IU/P以下では,全肝のLipiodol TAEは適応外となる。
c. ○
d. ○ 腫瘍径が3cmを越える腫瘍では,被膜外に癌の侵襲が高率にみられるため腫瘍周囲を含めた治療が必要である。このような腫瘍に対するエタノール局注では,頻回の注入を要し,十分な治療が行えないために不完全壊死の癌部を残す可能性が高い。そこで腫瘍径3Bを越える例,あるいは3病変を越える例に対しては
TAEとの併用を行う。
e. ○
40. 解答 c
右内外腸骨動脈分岐部〜外腸骨動脈起始部に有意狭窄を認め,閉塞性動脈硬化症と診断できる。
(1) × 病変部の血管の本来の直径と同じものを使用するのが原則。通常,腸骨動脈では6〜8 mm,大腿動脈では5〜6 mm
のものを使用する。
(2) ○ こうした医原性内膜解離は,ステントの適応である。
(3) ○ 一般に,腸骨動脈のPTAは大腿動脈に比べて,技術的に容易で,成功率,施行後の開存率も高い。
(4) × 超音波カラードップラー法は簡便で無侵襲,低コストな検査であり,スクリーニングや経過観察に有用である。
(5) × 従来より,アスピリン300mg/dayを術後できるだけ長期間経口投与を行うことが推奨されている。しかし,その抗凝固作用に疑問もあり,抗血小板薬のチクロピジン(パナルジン)やペラプロストナトリウム(ドルナー)が使用されることが多い。
(以上38〜40は宮崎医科大学・杉村 宏会員)
41. 解答 a
診断所見:大脳皮質の血流が対称性に低下している。低下は均等ではなく,頭頂葉と前頭葉に著明であり,運動領野と視覚領野の血流は保たれている。大脳基底核,視床,小脳,脳幹の血流は正常である。
診断プロセス:特徴的な血流低下のパターンから診断可能である。
鑑別診断:Creutzfeldt-Jakob病は大脳皮質のびまん性の委縮に加え,視床,線条体,脳幹や小脳にも病変が及ぶことが多いとされている。前大脳動脈閉塞は潅流域に一致した血流低下を認める。てんかん発作時には焦点の血流が増加し,脳血流SPECTで高集積として認められる。脳死の場合には脳血流は観察されない。
意見:Alzheimer病では初期には頭頂葉や側頭葉が血流低下をきたすことが多く,片側性のこともある。本例は進行した症例である。
42. 解答 c
診断所見:換気分布は正常である。血流は右上葉で欠損し,左肺にも肺尖部,下葉舌区および S6に欠損が認められる。
診断プロセス:区域性に多発するV/Q mismatchが存在し,肺塞栓や大動脈炎症候群が考えられる。
鑑別診断:閉塞性肺疾患では換気が低下し,通常は血流とマッチした低下を示す。81mKrの物理学的半減期は13秒と短いため持続的に吸入,換気しながら多方向の撮像をする。
43. 解答 c
診断所見:負荷時の画像では下壁における 99mTc-tetrofosminの分布が低下している。安静時の画像では分布の低下は消失している。
診断プロセス:負荷時に下後壁の心筋血流が低下し,安静時の血流低下は相対的に軽度であることから下後壁の虚血と診断される。99mTc-tetrofosminは
201Tlと同様,心筋の血流分布を反映する薬剤であるが,201Tlと異なり再分布は見られない。したがって負荷時と安静時にそれぞれ注射する必要がある。また一回循環での心筋抽出率は
201Tlに比べて低い。
44. 解答 c
診断所見:画像(A)では前壁における 123I-BMIPPの分布が低下しており,脂肪酸代謝の低下が疑われる。(B)では前壁における
201Tlの分布は正常であり,安静時の血流が正常であることを示す。
診断プロセス:安静時の血流が低下していないことから,心筋梗塞は否定的であり,前壁の心筋は viable である。安静時の血流が正常であるのに対して,脂肪酸代謝は低下しており,いわゆるミスマッチを示している。viable
な心筋の脂肪酸代謝の低下は虚血によると考えられ,PTCAやバイパス手術の適応である。99mTc-MIBIを用いた安静時心筋SPECTは
201Tlと同様の所見を示す。
(以上41〜44は群馬大学・織内 昇会員)
45. 解答 b
99mTc-アルブミンは血奬成分として体内に分布し、消化管からの再吸収がほとんどみられないことから消化管内への蛋白漏出や出血の検出に用いられる。
a. 消化管内への漏出の診断には漏出部へのトレーサ集積と,それに続く蠕動による消化管内のトレーサ移動が重要な所見である。本症例では静注30分以降に胃,小腸へのトレーサ集積がみられ、その後消化管内のトレーサ移動みられ静注24時間後には大腸が描出されている。従って、胃・小腸からのトレーサ漏出が最も疑われる。
b. 99mTc-アルブミンは泌尿器排泄があり膀胱への集積がみられる。また心・肝・腎や消化管自体の生理的な血液プールが描出されるため読影に注意を要することがある。
c. 蛋白漏出症ではアルブミンの血管外への消失のため交代率の亢進がみられる。
d. 消化管出血も,その病態は血液の消化管内漏出であり,蛋白漏出と同様の所見を示す。
e. 111In-トランスフェリンは赤血球系造血巣に集積するが,静注直後には血漿中に分布を示す。
46. 解答 e
腎血管性高血圧症(RVH)では,血液灌流の低下・腎実質集積のトレーサ集積低下・腎萎縮・腎盂からの排泄遅延・ピーク時間の延長・分腎機能の低下・腎実質内通過時間の低下がみられる。しかし、これらの所見はRVHに特異的所見とはいえないため,薬剤(カプトプリル)負荷試験を行い負荷前のレノグラムと比較して
RVH の診断を行う。
a. b. c. RVHはカプトプリル負荷によってレノグラムは負荷前に比べピーク時間の遅延・腎内通過時間の延長を示し,さらに高度血管狭窄例では腎集積は閉塞型,無機能型を呈する。したがって、本症例では両腎ともカプトプリル負荷陽性所見を示していることからRVHと診断され,腎血管拡張術が奏功すると考えられる。
d. 腎血管の狭窄度とカプトプリル負荷後のレノグラムとの関係を示す具体的な記述はあまりみられないが,ピーク時間の遅延を示す型,閉塞型,無機能型と順にgradeが高くなることから出題者の意図を考慮すれば正しいと考えられる。
e. 99mTc-MAGでは 123I-OIHと同様に有効腎血奬量(ERPF)の算出が可能である。糸球体濾過率(GFR)の算出が可能なトレーサは99mTc-DTPAである。
47. 解答 d
a. 99mTc-MDPは静注2,3時間後には約50%が泌尿器系より排泄される。
b. 骨シンチグラムは一般に静注2時間後以降に撮像が施行される。さらに軟部組織の集積を除き明瞭な骨集積画像を得るためには3時間後の撮影が望ましい。
c. 明らかな限局性の高集積を示さないが,体幹骨,四肢骨近位部の集積が瀰漫性に亢進し腎・膀胱集積が乏しい (super
bone scan)ことから,瀰漫性骨転移を示唆する所見である。
d. 腎機能低下によって腎集積が低下する場合もあるが,本症例は瀰漫性に骨集積亢進所見を伴うことから瀰漫性骨転移によるabsent
kidney sign であると容易にわかる。
e. 瀰漫性骨転移の原発巣としては成人では前立腺癌,乳癌,胃癌が多く,小児では神経芽細胞腫の頻度が高い。
(以上45〜47は日本医科大学附属病院・水村 直会員)
48. 解答 a
所見:甲状腺は2葉に分葉して前頚部正中に存在。左葉下極外側に欠損像を認める。左葉は軽度腫大し右側に偏位している。両側顎下腺にトレーサーの集積あり(正常所見)。その他の部位に異常集積を認めない。
診断プロセス:99mTc pertechnetate 甲状腺シンチグラフィにて,集積低下(欠損)を示す疾患を選択します。選択肢の各疾患の典型的なシンチグラフィ所見を記すと,(1)良性甲状腺結節,(2)甲状腺癌:シンチグラムで良性腫瘍と悪性腫瘍を鑑別することは困難とされているが,良性の場合には欠損部が凸型でその辺縁が円滑であり,欠損部が菲薄部を介して正常部へなだらかに移行する像を認めることが多い。悪性の場合には辺縁が不規則であり凹型ないし直線に近い欠損像を示すことが多く,片側の完全欠損の場合には癌と考えてよい。(3)バセドウ病:RI分布が均一なびまん性腫大像,高いRI摂取率を示すことが多い。(4)橋本病:初期には甲状腺腫大のみ。病態の進行でRIの分布が均一,不均一と様々である。b亜急性甲状腺炎:全欠損を呈する。甲状腺は描出されない。画像からは(1)が疑われ,(1)(2)を選択するのが妥当だと思います。(4)(5)で,希に限局性の欠損像を示し腫瘍との鑑別を要することがありますが,まず典型例を記憶すべきでしょう。
解説:甲状腺シンチグラフィには,123I か 99mTc pertechnetateが用いられます。99mTc pertechnetateは甲状腺への集積機序がヨードと類似し,甲状腺の位置・形態・大きさ,腫瘍の存在を知ることを目的とする場合には,十分な情報が得られます。131Iは,半減期が長く(8日)β線も放出するので被曝線量が多く,またエネルギーも高いので,甲状腺シンチグラフィには不向きです。最近では甲状腺癌の転移巣の検出およびその治療,バセドウ病の治療などに用いられます。
131Iを用いた甲状腺癌の転移巣の検出,治療後のシンチグラフィは,過去に2次試験の口頭試問に出題されたことがあります。内照射の手技はともかく,画像だけでも目を通しておくとよいでしょう。
49. 解答 d
所見:左前頚部に著しく強いトレーサーの集積を認める。その他の部位への集積はほとんど認められない。
診断プロセス:甲状腺機能が亢進し,123I甲状腺シンチグラフィにて限局性の高集積像を示す疾患を選択します。
解説:甲状腺の機能性腺腫(本邦では,濾胞状腺腫がほとんど )により機能亢進症を呈する疾患を,プランマー病と呼びます。腺腫は限局性の摂取率増加を示し,周囲の正常甲状腺はほとんど
123Iを取り込みません。
50. 解答 e
所見:頚部,胸部,腹部,骨盤部から大腿にかけて多数の集積を認める。これらの異常集積は肝よりも強く描出されている。両側鎖骨上窩,縦隔部,上腹部正中の集積はリンパ節へ,左上腹部の集積は腎への集積が疑われる。その他の部位の集積の分布はリンパ節や臓器に一致していない。
診断プロセス:全身に多発性の病巣が存在し,とくに小さな集積はリンパ節や臓器に一致していません。これらの異常集積は皮膚・皮下の病巣が疑われます。67Gaの親和性が高く,多数の臓器,皮膚・皮下転移とリンパ行性転移をきたす疾患を選択します。悪性黒色腫は,早期にリンパ行性および血行性に遠隔転移をきたしやすく,臨床的には皮膚,皮下,リンパ節の転移が多く見られます。67Gaの親和性が高く,最小では4
mmの結節性皮膚転移が検出された報告があります。肺癌では陽性率は病巣の大きさに左右され,直径2 cm 以上の原発巣の陽性率は高いが,転移巣が小さい場合,偽陰性が多いとされています。アミロイドーシスは,線維構造を持つ特異なタンパクであるアミロイド物質が全身の臓器の細胞外に沈着する事によって機能障害を伴う原因不明の疾患です。心,腎アミロイドーシスを
67Gaで検出した報告があります。
解説:67Gaは炎症,腫瘍に集積します。とくに,サルコイドーシス,悪性リンパ腫,悪性黒色腫,肺癌,肝細胞癌,甲状腺未分化癌で陽性率が高く,また,食道癌,頭頚部腫瘍でも,主に転移巣の検索に用いられます。胃癌,大腸癌,泌尿器・婦人科悪性腫瘍へは集積が低く通常施行されません。感染症に関してはAIDSを含めた日和見感染症で有用性が見直されています。(「臨床医のための核医学検査腫瘍」(金芳堂)では,67Gaが強く集積する疾患を,SLIM(スリム,S:Sarcoidosis,L:Lymphoma,Lung
cancer,I:Infection,M:Melanoma)と憶えるとよいとしています。)
(以上48〜50は新潟大学・高橋直也会員)
51. 解答 b
111InCl3(塩化インジウム)は血中でトランスフェリンと結合して造血骨髄に集積するため骨髄シンチグラフィに用いられる。
(1) ○ 躯幹部の骨髄,すなわち頭蓋骨,胸骨,鎖骨,椎体,仙骨,骨盤は明瞭に描出し,躯幹部の造血機能は良好と判定できる。
(2) ○ 成人では通常上腕骨や,大腿骨の近位部まで造血骨髄が存在するが,骨髄シンチグラムでそれより末梢の骨髄が描出される場合に,これを造血骨髄のperipheral
expansion(末梢進展)とよぶ。放射線照射や骨転移,再生不良性貧血による躯幹骨での造血の低下や全身性の造血亢進の際に認められる。本問では大腿骨末梢と脛骨近位部が描画されるほか,下顎骨の集積も増加している。
(3) × 111InCl3の腎からの排泄は正常者の場合で数%であり,造血機能障害があると増加する。腎機能の低下により腎集積が増加することはない。
(4) × 肝への集積は正常者でも見られる。再生不良性貧血や骨髄線維症では骨髄における造血の低下に伴って,肝や脾で随外造血が見られることがある。本例では肝における随外造血を否定することはできないが可能性は低い。
(5) ○ 111InCl3を用いる骨髄シンチグラムの撮像は静注後,通常48〜72時間に行われる。ちなみに111Inの物理学的半減期は2.8日。
52. 解答 c
a. 99mTc-DTPAは静注4時間後にはほとんどが腎から膀胱に排泄されている。
b. 99mTc-ECDは脳血流に比例して脳実質に集積し,局所脳血流を評価するための薬剤である。排泄経路は主として尿路であり,脾や骨髄への集積は少ない。
c. 99mTc-HMPAO標識白血球は感染巣の診断に用いられ,正常では主として肝脾と骨髄に分布する。
d. 99mTc-MIBI冠血流に比例した心筋内分布を示し,心筋血流の評価に用いられる。肝と腎から排泄され,4時間後には胆道系,消化管および腎,膀胱が描出する。
e. 99mTc-DMSAは腎シンチグラフィ用の薬剤である。腎皮質に集積して長くとどまる。
(以上51〜52は群馬大学・織内 昇会員)
|