第7回(1998年)二次試験問題解答および注釈
【診断・核医学】 1.〜28.

1.解答 c
 左側頭葉にリングエンハンスを示す多中心性のlesionを認める。中心となるcystic lesionでは,壁はT1強調画像で高信号を示し,微小出血の存在を示唆する。T2強調画像で周囲には広範な高信号を示す脳浮腫が見られ,mass effectも強い。さらに,Gd造影後の画像では,meningeal enhancementも見られ,対側の側脳室下角は開大して水頭症も存在すると考えられる。
 これらの所見からは,髄膜炎を伴う膿瘍と髄膜播種を伴う転移性腫瘍が考えられるが,Fallot四徴症の既往から考えて,cの膿瘍が解答として妥当と考える。多形膠芽腫では神経繊維に沿った浸潤が見られるが,本例ではその所見に乏しい。また,多発性硬化症では,活動性のplaqueで,エンハンスが見られるが,リング状を呈することは少ない。また,脳梗塞も亜急性期ではエンハンスが見られるが,これもリング状を呈することは少ない。

2.解答 a
 1枚目のCTでは,脚間糟・シルビウス裂にhigh densityが見られ,シルビウス裂では大きな血腫を形成している。2枚目の写真では前頭葉を中心にして脳溝にhigh densityが見られる。左側脳室の下角も拡大が見られる。強いくも膜下出血に右シルビウス裂に出血を伴った状態である。
 くも膜下出血をきたす疾患としては,脳動脈瘤・動静脈奇形が代表的である。このような強いくも膜下出血をきたすのは,動脈瘤破裂が最も考えやすい。動脈瘤の破裂部位が脳実質に隣接している場合は脳実質に血腫を形成し得る。シルビウス裂から島に血腫を形成しているのは,右MCA分岐部にある動脈瘤が破裂したためと考えられる。従って,答えはa。
 高血圧・アミロイドアンギオパチーは脳出血・梗塞の原因として重要である。出血性梗塞では血管支配に沿った梗塞巣と小血管の破綻に伴う小出血の集まりが特徴で,像が異なる。

3.解答 c
 右側頭葉に,T1,プロトン密度,T2強調画像とも,signal voidがみられる。内部は不均一だが,辺縁にも取り囲むようにsignal voidが存在する。生体内でsignal voidを呈するのは,石灰化とflowであり,選択肢の中ではc.動静脈奇形とe.乏突起細胞腫が該当する。(傍突起細胞腫でなく乏突起細胞腫)乏突起細胞腫では周囲への浸潤を伴うのが通常であるが,周囲の変化は見られない。動静脈奇形として見ると,右のMCA(M2)の拡張が目立ち,脳表の静脈も拡張している。内部のsignal voidはnidusを見ていると考えられる。辺縁のsignal voidも,動静脈奇形では微小出血に伴い石灰化が発生することがあり,石灰化を見ている可能性がある。所見からは動静脈奇形が考えられる。脳梗塞は,T2強調画像で高信号部分が少なく,血管支配にも一致せず,考えがたい。また,海綿状血管腫はこのような強いflow voidは示さず,遅い血流を反映して,プロトン密度強調・T2強調画像で高信号を示し,造影効果が見られることが多い。

4.解答 a
 前頭部のinter hemisphereに両側にまたがる腫瘍が存在する。腫瘍周囲の前頭葉には強い脳浮腫が見られる。腫瘍はT2強調画像で脳実質よりやや高信号を示し,Gdにて一部を除いて非常によく造影される。均一によく染まる腫瘍としては,選択肢の中では髄膜腫と悪性リンパ腫が代表的である。両者の違いは,髄膜腫が髄外腫瘍であるのに対して,悪性リンパ腫は髄内に発生することが多い点である。脳実質に発生する腫瘍が両側に広がるためには,脳梁を侵すが,この例では,冠状断で腫瘍外に脳梁が見られ,髄外腫瘍と考えられる。また,T2強調画像で,腫瘍辺縁にlow signal bandがみられ,これも髄外腫瘍を示す所見である。従ってaの髄膜腫と考えられる。
 精細胞腫・膠芽腫では神経繊維に沿った浸潤が見られるはずで,境界も不鮮明なことが多い。eの転移性脳腫瘍が,硬膜転移を示すのであれば,今回示された写真から,除外診断は難しい。
(以上1〜4は京都府立医科大学・古谷誠一会員)

5.解答 a
 a.正:胸部単純写真(右左側面)の部分である。右底幹の前方に大きい腫瘤状影を認める。これが比較的大きい右下肺静脈根部の接線像をみているものと思われる。
 b.誤:胸部単純写真(正面)心基部部分である。右心横隔膜角に重なり右心縁と交わるラインを示している。下大静脈をみているものと思われる。
 c.誤:胸部単純写真(正面)右肺尖部部分である。肺尖部に特に胸膜肥厚は指摘できない。肺尖脂肪織をみているものと思われる。
 d.誤:胸部単純写真(正面)大動脈弓部部分である。“aortic nipple”左(最)上肋間静脈の接線像である。
 e.誤:胸部単純写真(正面)下行大動脈部分である。paravertebral lineかと思われるが何を指し示しているのかわかりづらい。

6.解答 c
 両肺野をスキャン範囲に含めたthin-slice cT肺野条件である。両肺野びまん性に直径1cm以下の嚢胞性病変の多発をみる。嚢胞壁の厚みはやや厚いものと薄いものとが混在している。小結節もあるがいずれも小さく少数である。
 a.誤:細気管支肺胞上皮癌(BAC) 
  光顕上のいわゆる肺胞上皮癌のこと。電顕的にU型肺胞上皮細胞に類似した狭義の肺胞上皮癌,終末細気管支の粘液分泌細胞もしくはClara細胞由来が示唆される狭義の気管支上皮癌,その両者を合わせてこの名称で呼ぶ。画像上は肺炎類似の斑状影もしくは浸潤像,多発する辺縁不鮮明な腫瘤像を呈する。
 b.△:リンパ脈管筋腫症(LAM) 
  過誤腫性肺脈管筋腫症のこと。本疾患は生殖可能な女性に起こり,気胸を繰り返すことがある。異型性を有する平滑筋組織が主に肺内の間質で過誤腫性に増殖する病変である。画像上は本症例に類似するが,病変部の間に比較的正常肺が保たれている点,嚢胞壁のやや厚いものが混じっている点があわない。
 c.正:Langerhans細胞組織球症(LCG) 
 いわゆる肺 Histiocytosis X(好酸球性肉芽腫症)のこと。喫煙と深い関係が認められ,やはり気胸を繰り返すことがある。小葉中心性に肉芽腫を形成し,終末期病変の一つとして線維化に隣り合わせて気腫性嚢胞(空洞)を生じる。画像上は本症例に類似する,病期によってはこのように壁の薄い小嚢胞が多発することもある。
 d.誤:転移性腫瘍 
 いかなる画像も生じうるとは思うが考えづらい。
 e.誤:びまん性汎細気管支炎(DPB) 
 代表的な慢性気道感染症であり,呼吸細気管支の慢性炎症がびまん性に生じる。画像上は小葉中心性の小粒状影と周囲肺の透過性亢進が典型的である。

7.解答 a
 胸部単純写真(立位正面)である。両側中〜下肺野優位に透過性が低下しており,びまん性の網状影,線状影が目立つ。両心縁,下行大動脈下方の辺縁,両横隔膜いずれもが不明瞭化しているようである。びまん性の間質影を呈する病変でこの性別年齢のみでは特異的な疾患に結びつかないが,選択肢を見ると肺胞微石症をいいたそうである。希な疾患であるが,本症例は進展期の本疾患の画像に類似する。
 肺胞微石症は
(1)遺伝性疾患(常染色体単純劣性遺伝)で,約1/2に家族発症が見られる。△
(2)肺に限局し主に肺胞内に微石形成が認める。○
(3)本邦では検診時,若年発見例が多い。○
(4)末期呼吸不全時には胸水を伴う。×
(5)BAL中に微石を認め確診にいたるが,治療としては無効である。また現在のところ,有効な薬剤はない。×

8.解答 d
 胸部単純写真(正面)である。両側中〜下肺野中枢側優位に均一に透過性が低下しており,非区域性の浸潤像を認める。下肺野末梢は含気が保たれておりButterfly shadowを呈している。心肥大もあるかもしれない。急速にこの陰影を呈す疾患としては肺浮腫,肺出血,肺炎などいずれでもよいがSLEの合併症として選択肢の中でこの病歴にもっともあうものは,毛細血管炎などに基づくびまん性の肺出血であろう。

9.解答 c
 胸部単純写真(立位正面)および造影CT縦隔条件である。単純写真では中央陰影を強く右方に圧排する一側暗陰影であるが,CTより胸腔内に液体貯留と辺縁に不均一な壁肥厚を認め強く増強する。また液体内にガスもある(穿刺後か?)。また前方の肋骨周囲には軟部組織濃度の腫瘤を認め同部辺縁にも強く増強を認める。明らかな骨破壊像は認めない。本症例では胸膜炎の既往があることより慢性膿胸に合併した腫瘍を疑う。一般に結核による慢性膿胸は遷延化すると悪性腫瘍を合併しやすく,本邦ではリンパ腫がもっとも多いことが知られる。
 
10.解答 c
 胸部単純写真(正面)および中葉枝口レベルの両肺野をスキャン範囲に含めたthin-slice CT肺野条件である。単純写真では右肺門やや下方外側に肺動脈と重なるような腫瘤状の陰影を認める。CTでは右中葉枝口が同定されずその末梢に太いV字〜樹枝状の構造を認め,末梢に向けて急速な細まりを認める。右中葉肺野は下葉に比べて透過性が亢進を示しており過膨張が疑われる。
 a.誤:気管支嚢胞
 組織学的に気管支の構成成分である線毛上皮,気管支軟骨,気管支腺などを含む。胎生期の異常発生時期により縦隔気管支性嚢胞と肺内気管支性嚢胞に分かれる。肺内気管支性嚢胞は欧米ではseqestration spectrumの1病型である。内容物や二次変化などその病態は複雑であり,画像所見は多彩であるが一般に末梢肺に過膨張を伴わない。
 b.誤:肺動静脈奇形
 肺動静脈瘻(pulmonary-arteriovenous fistula)である。肺内で肺動脈と肺静脈が毛細血管を欠いた異常交通を示す病態である。(seqestration spectrumの1病型)単純写真では,肺野coin lesion,ブドウの房状,またはとぐろを巻いた形として現れる。
 c.正:気管支閉塞症 
 bronchial atresia(segmental overinflation)区域性の気管支交通の閉塞・狭窄により一般に末梢肺野の過膨張を生じる。小児のlobar emphysema(seqestration spectrumの1病型)との関連が示唆されている。V字〜樹枝状の構造はmucoid impactionを表しているものと考えられる。
 d.誤:肺血栓症 
 多くは深部静脈の血栓が肺動脈に塞栓し生じるもので男性では70歳以上の高齢者に好発する。画像上は側副血行路が存在し肺梗塞を伴わない場合,本症例に似た像を呈しうるが末梢肺に過膨張を伴わない。
 e.誤:MacLeod症候群
 Swyer-James症候群と同義。小児期のウイルス性気管支・細気管支炎の終末像と考えられる。病側肺は小さく,肺血管は中枢側も末梢側も細く,気管支分岐数も少ない。胸部単純写真では病側肺は小さく片側性透過性亢進肺を呈する。
(以上5〜10は小松市民病院・牧田伸三会員)

11.解答 b
 所見:右肺門部の液面形成を伴う嚢胞性病変と右気胸。
 診断プロセス:選択肢は,いずれも嚢胞(空洞)を呈しうる疾患である。Wegener肉芽腫は境界不鮮明なことが多い。肺分画症は下葉S10に好発し,塊状影を呈することが多い。気管支系と交通があれば液面形成を伴った嚢胞状腫瘤としてみられる。嚢胞性腺腫様奇形は先天性疾患で,新生児の気泡状肺として知られている。気管支閉鎖症は,肺門付近の腫瘤とその末梢肺野の血管影の減少が胸部X線所見の特徴で,左上葉に多い。骨肉腫の肺転移に気胸を合併することは有名である。
 知識がないと解けない問題であり,難問であったかも知れない。

12.解答 a
 所見:左肺下葉の背側胸膜に底部をもつ楔状影。
 診断プロセス:肺梗塞,器質化肺炎はいずれも楔状影をとりうる。肺カルチノイドは肺門や肺野に多く,胸膜下には少ない。肺結核は下肺野には少ない。
 鑑別診断の必要性:他に楔状影を呈する疾患として,alveolar cell carcinoma,犬糸状虫症などが挙げられる。

13.解答 b
 所見:左二弓(肺動脈幹)の膨隆が目立ち,肺血管は増強している。心尖は挙上し,右室の拡大が示唆される。大動脈弓は小さい。
 診断プロセス:上記所見から,(1)○(2)×(3)×(4)×(5)○
 鑑別診断の必要性:この写真から,心房中隔欠損症が疑われる。
 所見の読影ができれば正解できる問題である。

14.解答 c
 所見:右一弓の突出から,上行大動脈の拡大を考える。右第4肋骨下縁にrib notchingを認める。
 診断プロセス:上行大動脈の拡張をきたすのは_`である。肺動脈弁狭窄症では狭窄後拡張のため左二弓(肺動脈幹)は突出する。心房中隔欠損症では右房,右室の拡大を呈する。肺高血圧症は,本例の左二弓および肺血管陰影が正常であることから考えにくい。
設問にある食道造影の所見からも,大動脈縮窄症が考えられる。

15.解答 e
 所見:著明な心陰影の左右への拡大を認める。肺血管は増強している。
 診断プロセス:Ebstein奇形は右心房が著明に拡張する。心臓腫瘍では左右の心拡大をきたすことは少ない。拡張型心筋症では,特に左室の拡大が著明である。心膜液貯留では,左一弓はおおわれないのが特徴で,肺血管は減弱する。連合弁膜症では心陰影は左右に拡大し,最も考えられる。

16.解答 e
 所見:左四弓の突出と,左室壁に沿った石灰化。
 診断プロセス:石灰化は左室壁に限局しており,心室瘤が考えられる。鑑別すべき収縮性心膜炎では,石灰化は右心房や右心室周囲,房室間孔に認められることが多く,側面像では,石灰化は前胸壁に接してみられるのが普通である。
(以上11〜16は名古屋市立緑市民病院・安藤啓一会員)

17.解答 c
 所見:左胸部の単純X線像において左第3肋骨の前端近くに石灰化を伴った軟部腫瘤がみられる。CT像では同部に境界が明瞭で多数の石灰化巣を含む5cm×7cm程度の軟部組織濃度の腫瘤がみられる。
 診断プロセス:extrapleural signは陽性であり,CT像とも合わせ肋骨の腫瘤であることがわかる。石灰化巣の形状は無定形,粗大結節状のものが多数みられるが,辺縁には点状あるいは弓状を示すものがあり軟骨原性腫瘍を考えさせる。腫瘤は骨破壊を伴い大きい。軟骨原性の悪性腫瘍を考えるべきである。 
 鑑別診断の必要性:成人の限局性肋骨病変として腫瘍性のものでは悪性のものが多く,特に転移性骨腫瘍が多い。原発性としては多発性骨髄腫あるいは形質細胞腫,軟骨肉腫が挙がり,良性の内軟骨腫,骨軟骨腫なども比較的よくみられる。非腫瘍性のものでは線維性骨異形成が多い。従って解答の選択枝全てが肋骨に比較的よくみられる腫瘤である。石灰化巣の形状が診断のポイントとなる。

18.解答 d(あるいはe)
 所見:骨盤部単純X線像で左腸骨臼蓋部から茸状に突出する骨性の腫瘤がみられる。このためか骨盤は左に傾いている。左大腿骨の近位内側の骨幹端にも刺状の骨性隆起がみられる。
 診断プロセス:腸骨の骨髄と腫瘤とが連続していることから骨軟骨腫と考えられる。腫瘤の先端に軟部腫瘤があるようにもみえる(??)。病変は多発性で他の部位にもみられる可能性がある。好発部位は長幹骨の骨幹端や腸骨などで,他に肩甲骨や肋骨にもみられることがある。そこで胸部撮影が選択される(??)。また,多発性の骨軟骨腫症は遺伝性であり家族歴の調査も必要となる。骨軟骨腫が正常の成長板の発育を妨げることがあり,特に尺骨遠位端の短縮とそれに伴う橈骨の湾曲(Madelung deformity)や橈骨頭の脱臼はしばしばみられる(手指撮影???)。
 鑑別診断の必要性:体幹に近い骨軟骨腫からは二次性の悪性腫瘍(軟骨肉腫)が発生することがある。特に多発性で経過の長い症例にみられる場合が多い(多発性の骨軟骨腫症の20〜35%)。本症例ではまだ年齢が10歳と低く,明らかな二次悪性骨腫瘍の発生を疑わせる骨破壊像や軟部腫瘤の形成はみられない(??)。歩行障害の改善を目指しての腫瘤の切除術は行う意味があるが,生検術は必要ないか。
 本例については申し訳ありませんが解答に自信がありません。そもそも問題のX線像において軟部腫瘤があるか否かがわかりません。細かな所見がわからなくとも解答できる疾患ということでしょうか?

19.解答 e
 所見:左大腿骨頭は破壊,消失しており多数の骨片が関節内にみられる。左大腿骨は上外方に脱臼した状態で頚部の骨折部辺縁は刃物で切り取ったように鋭い。関節部を中心に軟部の腫脹もみられる。
 診断プロセス:高度の骨破壊あるいは骨吸収像,関節内骨片,軟部組織の腫脹などがみられ,特に骨折部断端があたかも骨切り術を行ったかのような鋭い辺縁を示す(pseudo-surgical sign)典型的な神経性関節症(Charcot関節)の像である。問題はその原因疾患の検索に必要な検査を問うている。X線像は原因疾患の種類によらず皆同様であるが,侵されやすい関節部位については原因疾患による差がみられる。原因疾患と侵され易い関節は,脊髄癆(膝,股,足関節),脊髄空洞症(肩,肘,手関節),糖尿病(中足趾,足根中足,足根間関節),アルコール中毒(中足趾,趾節間関節)などで,本症例においては,脊髄癆の有無を検索する目的で血液検査と脊椎のMRIが選択される。
 鑑別診断の必要性:2ヵ月という非常に短期間で大腿骨頭の破壊が起こっている点では,急速破壊性股関節症が鑑別に挙がる。原因は未だはっきりしない疾患で,近年その報告がみられるが発症はほぼ例外なく高齢の女性である。転移性骨腫瘍は基本的に骨端にはみられない。

20.解答 c
 所見:腰仙骨単純X線正面像において第1仙骨の左寄りに境界が不鮮明な骨硬化像がみられる。同部のCT像では左椎弓内に類円形の強い石灰化像がみられ,周囲骨髄には淡い硬化像が広がっている。aggressiveな骨膜反応はみられず骨外腫瘤の形成もない。
 診断プロセス:第1仙骨の左椎弓内の石灰化像が病変そのもの,即ちnidusとわかれば診断は簡単である。周囲骨髄にみられる硬化像からは疲労骨折や骨髄炎も鑑別に挙がるが,このような限局性の類円形の硬化像はみられない。線維性骨異形成にみられるスリガラス状濃度でもない。血管腫では骨梁が水玉模様(Polka dots)を呈する。脊索腫は椎体骨の正中部から発生し,骨破壊を伴い骨外に低濃度腫瘤を形成する。
 鑑別診断の必要性:nidusがわかれば即診断となる。最も鑑別が問題となるのは骨芽細胞腫であるが,この鑑別は組織像でも時に困難とされ,nidusの大きさが唯一の鑑別点となる。即ちnidusの直径が1.5cmを越えると骨芽細胞腫をより強く考えることになる。
 類骨腫には小さいものが多く,特に解剖学的に複雑な構造の脊椎領域,骨膜反応が乏しい関節内の病変などではCTやMRIが有用なことが多い。また,脊椎においては痛みで体を頻繁に曲げることにより側弯を来すこともある。
 治療は外科的な切除であるが,腫瘍が小さく,取り残しがあると再発する。最近ではCTガイド下に腫瘤の焼灼術が放射線科医の手により行われ良い治療成績をあげている。
(以上17〜20は信州大学附属病院・唐木田 修会員)

21.解答 e
 診断所見:腹部単純立位X線。軽度の小腸の拡張と鏡面形成が認められ,骨盤腔右(右仙腸関節尾側)に小石灰化がみられる。気腹の所見はない。
 診断プロセス:病歴,強い炎症所見をふまえて見ると,骨盤腔右の石灰化は虫垂石が疑われる。選択肢(1)の大腸閉塞の否定はできないがイレウス所見は軽微であり,選択肢(2)の注腸造影は虫垂炎であれば穿孔の危険があり適応は慎重に検討すべきである。選択肢(3)のガリウムシンチは陽性所見の見られる可能性は高いが虫垂炎であれば必須とは思われない。選択肢(4)の気腹の所見はみられず,選択肢(5)の急性虫垂炎は上記の診断所見より最も疑われるものである。
 鑑別診断の必要性:慢性虫垂炎,虫垂石の存在だけでは急性虫垂炎とするのは早計であり,理学的所見を総合的に判断し,他に炎症のフォーカスがないことを確かめるべきと思われる。
 選択肢(5)は鑑別診断の必要性で述べた理由を考えると,急性虫垂炎が最も疑われる,としたほうがより良いと思われる。正解者も断定的表現に抵抗を感じたであろう。

22.解答 c
 診断所見:腹部単純X線。小腸の拡張と鏡面形成がみられイレウスの所見である。右上腹部にpneumobiliaがみられ,右下腹部の仙腸関節右に石灰化が疑われる。
 診断プロセス:間歇的な右下腹部痛と胆道気腫により胆石イレウスを考えたい。選択肢(a)結腸憩室炎(b)虫垂炎(d)子宮付属器炎(e)回腸結腸重積,等を積極的に疑わせる所見はない。
 胆石イレウスを考えて写真をみても右下腹部の石灰化には自信が持てない。原版で見
ると明らかなのだろうが,写真の条件がやや不良と考える。解答は胆道気腫に気がつけば
除外診断をしてたどり着けると思われる。

23.解答 c
 診断所見:上部消化管造影2枚。胃にははっきりした異常所見は指摘できない。十二指腸下行脚には比較的深い潰瘍が多発して認められ,強い浮腫性変化及び内腔の部分的拡張,狭窄がみられ空腸にもケレクリング襞の肥厚がある。
 診断プロセス:まず,設問に過酸症の記載があり,かつ通常消化性潰瘍の起りにくい十二指腸下行脚に潰瘍形成が見られることより,Zollinger-Ellison症候群を強く疑う。十二指腸下行脚の拡張や空腸の浮腫も矛盾しない。クローン病(硬化性胆管炎合併)にしては粘膜面の特徴的変化が見られず,好酸球性胃腸炎(血中好酸球増加)にしては十二指腸下行脚の深い潰瘍が起りにくい。解答は多発性内分泌腺腫(MEA type-1)で下垂体腺腫の合併がある。大脳多形膠芽腫を合併しうるTurcot症候群に相当するポリポーシスの所見はない。回腸平滑筋腫を合併する疾患(強皮症のことでしょうか)にみられる十二指腸拡張とは潰瘍形成等で鑑別できると思われる。

24.解答 d
 診断所見:注腸X線写真。大腸にびまん性の小ポリープを認める。S状結腸から下行結腸の移行部にいわゆるapple coreがみられる。
 診断プロセス:大腸のポリポーシスであるのは明らかである。ポリポーシスの鑑別は1枚の写真からはかなり困難であるが,選択肢に沿って考えると(a)の炎症性ポリポーシスで多く見られる山田の3〜4型のポリープは無く除外できる。(c)の悪性リンパ腫(MLP型)で多く見られる頂部にびらんを有する小ポリープがいくつかみられるので否定は困難だが,進行大腸癌を合併する頻度と設問の最も考えられるのは?という趣旨より大腸腺腫症と思われる。選択肢b(腸管嚢胞性気腫症)を思わせる所見はない。選択肢e偽膜性大腸炎)の偽膜にしては,一つ一つの病変が境界明瞭であり除外できる。
 鑑別診断の必要性:写真が小さく,一つ一つのポリープを腺腫と診断するのは非常に困難です。進行大腸癌の存在なくしては,腺腫症の診断はできないであろう。
(以上21〜24は佐賀医科大学・深堀哲弘会員)

25.解答 e
 T1WI,T2WI ともにlow intensity示すS2 領域の病変。
 a.FNH ではscarがT2WIhighとなり,b.CCC,c.HCCでも程度の差はあるが,T2WI highとなるのが通常である。d.炎症性偽腫瘍でも経過,typeにもよるが,T2WIhighとなる部分があると考え,e.脂肪肝のfocal spared areaを正解と考え易い。加えて,in phased T1WI,out of phased T1WIで非腫瘍部がhighからlowとなり,非腫瘍部がfattyである。又,dynamic MRI early phase,delayed phaseにて問題のS2領域はearly phase から,染まっており,内部に正常血管構造も疑われる。腫瘍性の病変ではないと考えられ,AP shuntやcoronary vein が直接P2 に入る静脈還流異常の存在が疑われる。これらが脂肪肝のfocal spared areaの成因に関与していると言われており,解答はe.脂肪肝のfocal spared area。

26.解答 e
 肝左葉外側区域の多房性嚢胞性病変で壁が不整。但し,嚢胞−嚢胞間隙が極めて薄いところもある。石灰化や脂肪成分を伴わず,典型的なb.肝包虫嚢胞,c.肝血管筋脂肪腫は,まず,除外できる。a.肝膿瘍は多彩であり,除外しにくい。d.転移性肝癌も結腸癌や胃癌の一部に転移巣が集蔟し多房性嚢胞性病変となるが,この場合転移巣が壊死化するために生じるので壁の厚さがこれより均一となる印象である。結局,壁が不整な多房性嚢胞性病変といっても,a.肝膿瘍では液状化,d.転移性肝癌では壊死化の結果,嚢胞性病変となり,e.胆管嚢胞腺癌では,嚢胞壁から隆々と発育する実質性腫瘤により不均一な壁肥厚となる。絵合わせ的で,説得性に欠けるが,嚢胞−嚢胞間隙が極めて薄いところもあり,e.胆管嚢胞腺癌が解答であろう。

27.解答 d
 左4枚の連続像が(3)ダイナミックMR像であり,右が(4)上腸間膜動脈造影下門脈CT像(IVC よりPVがよく染まっているので通常のダイナミックCTの門脈相出はない。)であることは自明。dが解答。問題はこのS6 のSOLは何か? 動脈相が充分でないダイナミックMR像であるが,辺縁から徐々に染まっていく血管腫とするのか(とすると,最後の相がatypical),mozaic型結節即ち,肝細胞癌とするのか,後者だろうか。

28.解答 c
 20歳の女性の急性腹症,緊急単純CTは胆嚢結石,総胆管結石。胆管−膵管の合流異常を考慮して,c.内視鏡的逆行性胆管造影を選択させる問題か。いずれにしろ,他は選択しにくい。
(以上25〜28は富山労災病院・広瀬仁一郎会員)