第7回(1998年)二次試験問題解答および注釈
【治療】 1.〜9.

1.
(1)生存率のどの点をとっても,一定の障害を発生するに要する線量は無酸素状態では酸素に富んだ時に比べ3倍必要である。

グラフ

(2)OER(oxygen enhancement ratio)
   酸素効果の大きさを表すもの。無酸素状態で照射したときのある効果を起こすのに必要な線量を酸素に富んだ状態で同じ効果を起こすのに必要な線量で割った値である。この酸素増感比は酸素濃度に依存する。X線とかγ線といった粗に電離を起こす放射線ではOERは2.5と3.0の間である。
(3)?
   腫瘍内には,低酸素状態(20mmHg以下の酸素分圧)の細胞が存在し,この低酸素細胞が放射線抵抗性であり,再発能力があると考えられている。それが臨床上放射線治療の成功を妨げると考えられる。低酸素細胞には2種類あるとのことであるが‥‥‥?)
(4)1. 高LET放射線
    (高LET(linear energy transfer )を持った放射線を用いる。サイクロトロン,シンクロサイクロトロンなどから放出される重粒子線を用いる。)  
   2. 温熱療法との併用
    (温熱処理は,酸素性細胞より,低酸素性細胞に対して,より大きく致死効果を持つ。)
   3. 低酸素細胞増感剤
    (ミソンダゾールなどのニトロ化合物がこれに属する。低酸素性細胞が選択的に増感される利点があるが,好気的条件下にある細胞の毒性も無視できる程に低くはない。また正常組織にも低酸素性細胞が存在するなどの問題がある。)
   4. 高圧酸素
    (放射線治療毎に毎回患者を2〜3気圧下の純酸素下におくことにより腫瘍への
酸素供給を増す。実際にはあまり効果がなく,限られた施設で用いられているのみ。)

2.
(1)Adriamycin
 副作用:心毒性(心筋障害作用)
 対策:心疾患(駆出率45%以下,心筋梗塞,狭心症など)では用いない。蓄積総投与量は500mg/m2以下にする。
(2)Cisplatin
 副作用:腎毒症 
 対策:強力に利尿を行う。クレアチニンが1.5mg/dl以上の場合は使用しない。
(3)Bleomycin
 副作用:肺線維症 
 対策:蓄積総投与量を300mg以下にとどめる。高齢者,放射線治療との併用例,では特に注意する。
(4)Vincristine
 副作用:神経症状 
 対策:軽度の知覚障害と深部反射の減弱の頻度が高い。広範囲に進展した末梢神経障害,強度の便秘,イレウスでは減量ないし中止する。
(5)5-Fluorouracil
 副作用:骨髄抑制粘膜皮膚障害
 対策:骨髄抑制は最終投与後10〜14日目で最低値に,回復に21日を要することを知る。粘膜皮膚障害については,口内炎は重篤な副作用の早期症状であることがあり,また,食道炎,直腸炎,下痢に注意する。紫外線により皮膚反応の増強をみる事がある。

3.
(1)
 1. germinoma
 2. teratoma
 3. embryonal carcinoma
 4. choriocarcinoma
 5. (endodermal sinus tumor)
(2)germinoma
(3)試験的に全脳照射20Gyを行い,CTでその効果をみる。
   著しい縮小が認められた場合には胚芽腫として,さらに全脳照射で30Gyまで照射し,その後腫瘍局所に20Gy追加する。
   髄液の腫瘍マーカーが陰性なので全脊髄照射は行わない。
   全脳照射は中後頭蓋窩も十分含めた左右対向二門照射,下縁は第2頚椎椎体の下縁。
   腫瘍局所照射は左右対向2門照射あるいは多門,回転照射。
   1回線量は2Gy/Frで。
  (以上,本例を,腫瘍単発例として方針を示した。しかし最初に全脳照射をせずに,脳室系を全て含む全脳室照射とするなどの方法もあり,定見が得られていない。)
(4)晩発性障害としての知能障害(照射後1〜4年の間に多く発生)。
(5)cisplatin,bleomycin,b
                 (以上1〜3は高松赤十字病院・塩田博文会員)

4.
1. 放射線治療中に禁煙をさせなかったこと。照射期間中の喉頭の安静が必要である。
2. 放射線治療で10MV X線を用いたこと。60Co γ線または4〜6MV X線を用いる。
3. 予定総線量が60Gyであること。T2では通常分割照射法で66-70Gyが必要である。あるいは多分割照射法(1回線量1.2〜1.5Gy,1日2回,総線量72〜78Gy)を用いる。
4. 放射線治療を2週間中断したこと。split courseが入ると局所制御率は低下する。
5. 照射中断期間があったにもかかわらず60Gyで終了としたこと。

5.
(1)
1. 胸部CT−腫瘍の進展範囲,傍胸骨リンパ節転移,肺転移の有無を調べるため
2. 骨シンチ−骨転移の有無を調べるため
3. 頭部造影CTまたはMRI−脳転移の有無を調べるため  
4. 腹部CT−肝転移の有無を調べるため
(2)T4a N1 M0 Stage3B
(3)治療方針
  内分泌化学療法を先行し切除可能になれば乳房切除・腋窩郭清術を施行した後術後照射を行う。内分泌化学療法後に切除できなければ放射線治療を行い,その後切除可能
になれば乳房切除・腋窩郭清術を施行する。いずれの場合も後に内分泌化学療法が行われることが多い。
放射線治療
a.照射時期:内分泌化学療法後に切除不能の時,もしくは内分泌化学療法後切除可能となり手術を行った後。
b.照射範囲:乳房全体(術後は胸壁),腋窩リンパ節,鎖骨上窩リンパ節,内胸リンパ節
c.線源:乳房(胸壁)は60Co γ線または4〜6MV X線による接線照射か,電子線による照射が行われる。腋窩・鎖骨上窩・内胸リンパ節は60Co γ線,4MV X線または電子線が用いられる。追加照射では電子線もしくは192Ir等の密封小線源を用いる。
d.照射技術:ここでは3例を上げたが他にも方法がある。
1.乳房(胸壁)をphotpnによる接線照射,鎖骨上窩・腋窩・内胸リンパ節をphotonによる前1門照射とする。接線照射の照射野に腋窩を含むこともある。傍胸骨を胸壁接線照射の照射野に含める場合もあるが,照射野に含まれる肺野の厚さは2cm以上にならないように注意する。
2.乳房(胸壁)を接線照射,鎖骨上窩・腋窩を前1門照射,傍胸骨は別に前1門照射とする。心臓への被曝を少なくするために傍胸骨には電子線を用いる。傍胸骨と胸壁接線照射のつなぎ目のgapを少なくするために,傍胸骨の照射を5度程度患側に傾ける。
3.胸壁をボーラスを用いて電子線で照射,鎖骨上窩・傍胸骨・腋窩をphotonによる前1門照射とする。他に注意・工夫する点として,鎖骨上窩リンパ節をphotonで照射する場合に頚髄を照射野から外すためにビームを10〜15度ほど患側に傾ける,photonでの胸壁接線照射時に皮膚線量を考えボーラスを使用する,接線照射の工夫としてhalf beamやcoplanar法を用いる,照射野のつなぎ目では線量分布が不均一となるため照射期間中につなぎ目を変更するなどがある。
e.分割法:1回1.8〜2Gy,週5回
f.総線量:乳房(胸壁)に50〜60Gy照射,腋窩・鎖骨上窩・傍胸骨に45〜50Gy照射。手術不能の場合は腫瘍に縮小して電子線もしくは組織内照射で10〜20Gy追加,腋窩リンパ節に縮小して電子線で10〜15Gyを追加する。
(4)5年生存率 約40%

6.
(1)T2 N1 M0 病期B
(2)照射野は腫瘍の上下(5〜6)cm,前後対向二門で(40〜45)Gy,斜入対向二門で (15〜20)Gy
(3)放射線脊髄炎の予防のため
(4)線量評価は粘膜下(5)mm,1回(4〜6)Gy,週(1〜2)回,計(2〜4)回
(5)線源と食道粘膜面の距離が短いと粘膜面から深部への線量率勾配が急になるため粘膜面の線量が高くなり潰瘍や狭窄を生じ易くなる。バルーンアプリケータを用いるの
は,線源と粘膜面の距離をとり障害発生を少なくするためである。
(6)a
(7)@食道潰瘍,穿孔A食道狭窄B放射線肺臓炎
(以上4〜6は飯田市立病院・佐々木 茂会員)

7.
(1) Dukes分類を下記に示します。
 A: 癌腫が腸壁内に限局するもの。
 B: 癌腫が腸壁を貫いて浸潤するが,リンパ節転移の無いもの。
 C:リンパ節転移のあるもの。(遠隔転移を認めない)
(追記)遠隔転移がある場合にはDukes Dと表すこともある。Dukes Aの腸壁内とは大腸癌取扱い規約のMPまでにとどまるものとする。なお,Astler & Coller分類についてもご覧下さい。
(2)Dukes C, 手術単独治療後の5年局所再発率は30〜40%です。
(3)直腸癌の術後照射は,全骨盤腔に前後対向二門で40Gy/20回/4週程度照射するのが一般的です。また,手術時に残存病巣が認められた場合の追加照射は,
 1.照射野は残存病変に限局させる。
 2.10から20 Gy / 5から10回/ 1週間から2週間で照射する。というのが一般的です。
(4)これと言って定まった回答は無いと思われます。例を挙げると
 1. ハイパーサーミア:放射線治療の効果を増強するため,RF波を使用して,42℃以上,45分から1時間の加温を目標とします。
 2.局所動注療法との併用:CDDP等
 3.Continuous low dose rate irradiation: Inverse dose rate effectを応用する方法。症例数は非常に少ないが,試すは価値は十分にあると思われます。
 4.Cell cycle related radiation:sensitization:細胞のradiosensitivityがM期で最大となる事を利用した照射法。Taxiol等のmitotic arrestを起こす薬剤を用いて,tumor
cellのM期分画を増大させ,M期ピークと連動させてradiationを加える方法。現在,各種
臨床的に試行されています。他にもいろいろな回答があると思われます。Misonidazole
はどうした。遺伝子治療との併用もあるんじゃないか? Hyperbaric oxygenを使うのもいいんじゃないか?という声も聞こえてきますが,何でも宜しいかと思われます。
(5)放射線照射に伴う副作用を知っている必要があります。骨盤部外照射に伴う副作用として,1)白血球減少症(急性障害),2)下痢(急性障害),3)小腸障害(晩発障害),4)膀胱炎(急性障害),5)膀胱の繊維化(晩発障害)がありますが,最も注意しなければならないのが,急性障害では下痢,晩発障害では小腸障害(重篤で時に致命的)です。したがって,解答は次のようになります。
 1.下痢の大きさは,照射野の大きさと一回線量に比例するため,全骨盤照射の場合は一回線量を1.8Gyとする。下痢が激しい場合は,照射を休止する。
 2.小腸障害をできるだけ抑えるために,不必要な照射野を削る,腹臥位での3門照射を用いる,手術時に腸管を固定する,照射時に膀胱を充満させ小腸を照射野から外す。

8.
(1)子宮頚癌で,子宮をこえるが,骨盤壁もしくは腟の下1/3に達しておらず,なおか
つ子宮傍結合織浸潤がある場合なので,IIb。
(2)この患者では,右尿管狭窄と右水腎症があるので,外科手術よりも放射線治療が優
先されます。他に,外科手術よりも放射線治療が優先される場合として,1)高齢者,2)肥満(実はこれも本題の回答になり得る),3)重篤な他疾患を合併している場合,4)患者の手術拒否があります。
(3)外部照射は10MV X線を用い,一回線量1.8〜2Gyで総線量20Gyまで照射,1.8〜2Gyで中央遮蔽を行います。
(4)腔内照射は,226Raまたは137Csを用いて行っていましたが,術者の被爆をなくす目的や,治療時間(1回20時間もかかるのです)を短縮するため,60Coや192Irを使うようになりました。
 A点線量とは,病巣線量の基準点として用いられ,子宮長軸に沿って,上方2cm,両側方にそれぞれ2cmの点です。これを基に1回5Gy程度で3回から4回行います。

9.
(1)扁桃(Waldeyer輪)初発で,非連続的な進展をしていることから,非ホジキンリンパ腫と考えられます。Waldeyer輪初発の非ホジキンリンパ腫にはLSG分類のびまん性小細胞型が多いとされています。また,ATLA抗体陰性であることからB細胞が考えられます。
(2)このケースの場合,横隔膜の上下一方における2つ以上のリンパ節領域の侵襲が見
られることから,II期。さらに,初診前6ヵ月間に原因不明の10%以上の体重減少というB症状があるため,最終的なAnn Arbor分類はII Bとなります。
(3)Waldeyer輪初発の非ホジキンリンパ腫には,高率に消化管(特に胃)の病変を合併します。したがって,上部消化管造影検査が是非追加しておきたい検査と考えられます。
(4)CHOPのCはCyclophosphamide, HはHydroxydaunorubicinです。
(5)この場合の総線量は40Gy程度です。
                 (以上7〜9は岩手医科大学・原田 聡会員)