JCR:日本放射線科専門医会・医会

Q  

放射線科に入ると、X 線の被曝が多くなるのではないかと心配です。放射線科の女性医師は、他の科に比べて被曝線量が多いのでしょうか。

京都医療科学大学医療科学部 大野 和子

大野和子先生 放射線科医師の被曝線量は、問題とならないほど少しです。放射線診療に従事する医師の安全を守るために、法律で線量限度を定めています。しかし、実際には、この限度値を女性医師が越えたという報告はありません。多くの放射線科医師は、年間1mSv(ミリシーベルト)にも満たない被曝線量です。この値は日本の国で生活していて自然界から受ける放射線量と同程度です(注:線量限度は単年度50mSv、5年間の合計で100mSv以下)。これには、CTやMRIの画像診断が現在の放射線科医師の業務の大半を占めることも影響していると思います。確かに、核医学診療で検査や治療を受ける患者さんに接する場合や、IVRのために、血管撮影室に入って治療を行なう場合には、放射線被曝をゼロにすることはできません。しかし、医師が不必要な被曝をしないための、患者さんとの適切な距離の保ち方や、IVR術者の被曝を低減しながら質の高い医療を患者さんへ提供する方法などを、放射線科では新人医師が確実に習得できるように教育します。このため最近は他科の医師もIVRに積極的に参加していますが、放射線科医の被曝管理は最も合理的にできています。医師は、様々な感染症の患者さんに直接対処しなければなりません。その危険性に比べれば、安全が担保され管理が行き届いた放射線科での診療は何も心配をする必要はないと言えます。

 子供を希望している女医が妊娠への影響を心配する場合がありますが、最近の生物学的研究により、生殖腺は放射線の影響をそれほど受けない臓器であることが確認されています。この事実は、放射線防護に関して最も権威のある、国際放射線防護委員会(ICRP: international committee of radiation protection)も承認しています。さらに最近の知見では、妊娠中の母体のDNAには放射線被曝の記録が残存していても、生まれた子供の遺伝子からは同じ記録は確認されないことが明らかとなりました。また法律では、妊娠中の女性の放射線被曝について、お腹の中の赤ちゃんは、母親とは別の人格を持った公衆と考えて、公衆の線量限度が担保できる様に、妊娠を確認してから出産までの期間の胎児の被曝が1mSvを越えない管理が必要だとしています。但し、通常の放射線診療業務では、前述のように1mSvを越えることはほとんどありませんから、妊娠後、放射線診療業務を中止する必要はありません。健康で安心して、妊娠・出産が出来る状況を、放射線科では注意深く、此処の状況に応じて対応しています。

 女性の貴方に放射線の安全管理技術を身につけた放射線診療のスペシャリストとして活躍していただけるならば、放射線診療に従事する女性のコメデイカルが安心して働ける職場環境を構築するだけでなく、放射線診療を必要としている多くの患者さんの、被曝に対する一抹の不安感も取り除くことについても貴重な貢献をしていただけるものと確信しています。

プロフィール(略)
愛知医科大学大学院博士課程終了(テーマは非電離放射線防護)
14年間、一般放射線診断医として大学病院勤務の後、島津学園京都医療科学大学教授(島津製作所グループ。昭和2年開学の診療放射線技師教育機関)近著:医療放射線の常識・非常識(インナービジョン)

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