放射線科に興味を持ったのはいつですか?なぜ放射線科を選んだのですか? |
高槻病院放射線科部長 広田佐栄子
私が放射線科を選んだ理由は、他の多くの先生方とは少々趣が違うかもしれません。ちょっと滑稽なものです。中学生のころ、私は「巨人の星」が大好き(花形満のファン)でしたが、この漫画の中で主人公星飛雄馬の恋人が悪性黒色腫に罹患するというストーリー展開があり、そのディテールの荒唐無稽さはさておき、病気とは無縁、周囲に癌患者もなしという環境で育った私にとっては「癌という恐ろしい病」が、妙に印象に残りました。
小学生の頃はマリー・キュリーの伝記に感銘を受け、「よし科学者になろう!」と思っていた私は「癌研究をする科学者」にその方向性を軌道修正し、さらに岡田節人氏の癌の生物学について著した本を読んで「癌っておもしろい……」と単純に感化され、最初理学部の生物学科に行こうと決めていたのですが、高校1年の時に新聞で当時の国立がんセンターの医師が何かの癌の画期的な治療法を開発した(ありがちな記事ですね……)というような顔写真入りの医療記事を読んで、癌研究をする医師というのもありなのだ、と気がつくと同時に「素晴らしい基礎研究をすれば何千万人の癌患者さんの命を救えるかもしれないが、一人も救えないかもしれないし、むしろ救えない確率の方がはるかに高いわけで、臨床医になったら画期的なことはできないが、一人でも二人でも確実に救えるかもしれない」と考えを修正、基礎研究をする道も臨床医になる道もある医学部に進路を変更しました。
さて、医学部に行ったのはよいのですが、私が進学した神戸大学では当時癌診療に力を入れていなくて(学生の目にはそう映った)、癌を扱っている診療科は、「外科」「泌尿器科」「皮膚科」「放射線科」のみでした(のようにしか見えなかった)。外科系には体力的に自信がなく、狭い領域の癌に特化するのもどうかと思ったので、結局「放射線科」の戸を叩いたというわけです。従って、いつ興味を持ったのか?と問われると大学卒業直前ということになります。
これだけでは、なんのことやらという話で終わってしまいそうなので、ここまで歩んできてふと思ったことを書き綴ってみたいと思います。まず「登っている人間には全体像が見えない」ということです。私のもっていたイメージでは Medical oncologist(腫瘍内科医)が自分のなりたい医師像に一番近かったと思うのですが、そのアプローチ法がなかったためにRadiation oncologist(放射線腫瘍医)になりましたが、ある程度登ってふと振り返ると、大学の外に Medical oncologist の活躍の場があったことを知ることになる、つまり自分の登ってきた道以外にもいろんな道があったことを知るに至りました。が、さらに登っていくと、結局、道はいろいろあれど、ゴールは一緒(私の場合は Oncologist)なのだということに気付かされました。Radiation oncologist であろうが、Medical oncologistであろうが、Surgical oncologist(腫瘍外科医)であろうが、扱うツールが違うだけで、癌患者さんの治癒やQOLの向上を目指すことになんら変わりはなかったのですね。「放射線治療(腫瘍)医」というのは癌治療医になるための一つの門にすぎなかったわけです。仮に全体像が見えていなくても「心にぶれないサーチライトを持っていれば、どこを通っても行きたいところに行ける」というのが私の感ずるところです。
次に「女性医師および女子医学生の皆さんへ」という観点でこの職業を見直してみると、あらゆる腫瘍医の中では、放射線治療(腫瘍)医のライフスタイルというのが最も女性に向いているのではないかと思います。私は、44〜5歳位までは主治医として病棟も持ち自分で化学療法もやり夜中の呼び出しにも応じてきて、それは非常に重要な経験であったと思うのですが、育児や介護などとの両立はしばしば困難をきたすというのも現実であろうと思います。体力ある若い時期は研修の一環としてそういう経験を積むべきだというのが私の持論ではありますが、最近は病棟を手放す放射線治療部門も増えていて、その点は女性のキャリア継続と家庭生活の両立をする上ではハードルを下げる結果につながっていると思います。余程の年齢と役職にならない限り、外科医や薬物療法医が病棟からはずれることは考えづらいでしょう。しかしその分、患者さんとの関係性が希薄になり、相対的に外科や内科と比較すると立場が弱くなりがちなのですが、このディスアドバンテージを跳ね返すのが、知識とコミュニケーション能力と思います。対患者さん、対他診療科医、対他職種医療関係者のいずれにおいてもですが。女性は生物学的にコミュニケーション能力に長けているとされており(一般論であって、厚かましくも私がそうだという気はありませんが)、そういう面では適性に富むのではないでしょうか?よく見ると有能な男性放射線腫瘍医は皆さん、大変 talkative & communicativeと思うのですが、そう感ずるのは私だけでしょうか?
文末になりましたが、この文章を読んで Radiation oncologistをめざす女性医師(男性ももちろん大歓迎!)が出てきてくださり将来どこかで一緒に診療できれば光栄の至りです。
プロフィール(略)
神戸大学医学部卒業後同付属病院にて研修医として勤務ののち、神戸大学医学部大学院、川崎病院放射線科勤務、兵庫県立成人病センター(現:兵庫県立がんセンター)勤務。2004年から高槻病院放射線科勤務)
