女性放射線科医の一週間 |
癌研有明病院画像診断部 植野 映子
自己紹介
筑波大学を卒業後、放射線科に所属。救命救急研修を半年間、その他はすべて画像診断、IVR に従事してきた。今年で10年目。専門は骨軟部領域の画像診断とIVR 。趣味はテニス、スキー、バイク(乗るだけ。いじるのは無理)。雨が降っているときは読書か料理。アイロンがけをするとなぜか夢中になって止まらない。
生活概要
起床時間は平日も週末も5時ごろ。毎朝、骨軟部領域MRIの 遠隔読影をこなしてから支度。余裕があれば多摩川沿いを10km 走って出勤。出勤時間は曜日によってまちまちだが、整形外科とのカンファレンスがある月曜日は7時すぎには到着するようにしている。病棟・当直業務はないが、私は IVR を担当しているため、術前・術後の対応を検査時間外に行っている。また緊急止血などの際は曜日時間かまわず対応している。
月曜日:朝7:30 より整形外科とのカンファレンス。術前症例の確認と検討。そのあとCT, MRI を担当。読影が終了次第、明日のIVR を行う患者さん全員とお話。5人〜10人とばらつきがあって、帰宅時間もばらばら。
火曜日:一日中 IVR. これも件数によって帰宅時間も疲労度もまちまち。夜は肝胆膵カンファレンス(外科、内科、画像診断部)があるものの、気力がここまでもたないことがほとんど。
水曜日:一日中読影、主にCT。他のIVR 担当者が不在のため、頻回の電話で仕事が途切れるのが面倒な日。夜は整形外科の術後カンファレンス。術者の解説を聞きながら切り出し前の検体を確認。画像診断医にとってマクロ標本をすみずみまで眺められる機会は非常に貴重。終了すると22時を過ぎるのが基本だが、このカンファは絶対にはずせない。
木曜日:CT, MRI を読影しつつ、午後はMRI とIVR を同時進行。とはいえ最も余裕がある曜日なので、同僚と秘密会議するのはたいていこの日。
金曜日:外勤日。茨城県までドライブして筑波大関連病院をお手伝い。最近はご多分に洩れず件数の増加があり、一日中大急ぎで読影している状態に。それでも普段より早く帰れるのをいいことに、仕事のあとはテニスへ。最近は学生時代よりうまくなったのではと勘違いする始末。そのうち草試合にデビューしよう。なんか勝てそうな気がするし。
土曜日:第1、第3、第5土曜日は病院が営業しているので出勤。他は土日とも休み。平日には時間・気力が残らないので、データ整理や学会発表の準備は週末にやるのが基本。でも今週は田沢湖マラソン参加(ハーフをゆっくり走るだけ)のため、新幹線で秋田へ。
日曜日:前任地である岩手医大にお世話になっていたころに知り合ったランナー友人(看護婦かつ青森県国体選手)たちと(スタート前後だけ一緒)田沢湖マラソンに参加。なんでこんな超人と一緒にいるのかまったくもって謎。
最近は女性医師の労働環境についての議論が活発になされているようである。独身貴族の私としてはまったく興味がなく、真剣に読むことはなかった。今回は「女性放射線科医の生活」を紹介するとのことであるが、私個人は特に女性だからといって困ったこともなければ、特別扱いされることもなくきているのでごく普通に一週間を記載してみた。
自分が経験した以外の労働環境が分からないので非常に勝手な意見にはなるが、仕事に邁進したければ性別に関係なく過労死するまで仕事をすればいいし、ほどほどの仕事がよければほどほどにやれば良い。放射線科医は(あくまで一般論として)他科に比べて仕事量をコントロールできてしまうことが多いのは事実だろう。放射線科医の仕事へのかかわり方を決めるのは個人の主体性以外にないというのが私の考えである。性別も家庭の有無も関係なく、自分がなんらかの選択をした結果生じるデメリットに対して腹がくくれるか否か、というだけのことではないだろうか。
私個人のことを言えば、特に長期的なビジョンもなく目の前の好機に乗ってきただけというのが本音である。ではあるが、思い返せば筑波大勤務中で既に国際学会での発表、英語論文投稿の機会を頂いていた。これに関しては私個人の度量などでは決してなく、私を育ててくれた筑波大の底力というほかはない (いいなあと感じた若い先生は迷わず南先生へご連絡を)。ただし、その時々で「頂いた機会を最大限に利用することを最優先する」という選択をしてきたのは私自身である。その結果生じたデメリットといえば、後輩(♂)に「植野先生はもう少し私生活も充実させるべきです」と面と向かって言われたことかもしれない。あくまでも彼が私に配慮した結果の発言であったし、別に傷つくこともなかったが面白おかしく過ごしていたつもりだった私は大いに驚いた。そう言われるような生活をしていたことを誇るつもりは毛頭無いが後悔もなく、自分が満足している状況に対する他人からの評価が異なることを自覚しただけだった。もちろん後輩にそんな発言をさせてしまう生活は避けるに越したことはないが。
よく問題にされる家庭・育児と仕事の両立については私に語れることはない。幸運なことに今まで私が一緒に働いたことがある育児中の先生方は、職場への影響が最小限になるように必死の努力をしている方たちばかりだった。彼女たちの家庭の都合で私の仕事が増えたことも予定が狂ったことも経験しているが、全く嫌な思い出ではなく、むしろ嬉しかったような記憶がある。その理由は彼女たちの働きぶりに私が一目置いていたからに他ならない。ただ、自分が育児と仕事の両立に悩む立場であったらと思うと想像もしたくない、というのが偽らざる本音である。なぜなら「育児中の医師に対する十分な配慮がなされている職場」というものをこの目で見たことがないからだ。
しかし、家庭と仕事の両立に悩むのは女性、と思考無しに収束するのはなぜだろう? 私のこの原稿も「思考無し」状態ではあるが、本来であれば職業人全員が等分に悩むべき問題ではなかろうか? 実際、育児と仕事で多忙の渦中にいる貴女方はそんな無用の疑問などとうの昔に捨て去っていることは重々承知だが、本質的な問題はそこにあるとは思われないだろうか? 自由を謳歌中のハナタレ小娘の意見と鼻先で笑っていただいてかまわないが、この原稿依頼を受けた時に「このまま女医を特別扱いすることが将来本当に我々の為になるのだろうか?」という危惧(家庭と仕事の両立に悩むのは女医のみである、という前提を我々自身が強く肯定してしまってはいまいか?)を抱いたことは忌憚なく記載させていただく。
