医療法人禎心会セントラルCIクリニック 塚本江利子
「放射線科の魅力」というテーマをいただきましたが、うーん、難しいですね。魅力がないというのではなく、他科で働いたことがないので、何が放射線科特有の魅力なのかがよくわからないというのが本音です。若いときは診断というスキルを持てるとか、時間を自分でコントロールできるなどと考えていたのですが、それはなんだか本質ではないような気が最近してきました。なので、最近仕事をしていて、感じることを書いてみようかと思います。
私はご存知の方も多いと思いますが、現在はPET診断の仕事をしています。数年前までは大学で核医学全般のことをしていて教育も研究もと欲張っていました。北海道大学での勤務が長かったのですが、こちらのクリニックに勤務する前に札幌医科大学でもお世話になりました。卒後すぐは市立病院でレジデントをしました。すぐに子どもが生まれたので、20数年、子育てをしながら仕事もしていました。つい最近まで、無我夢中でなにがいいのか悪いのかわからないようなお恥ずかしい状況でしたが、やっとなんとかものが考えられるような状況になりました。そこで、今しみじみ感じているのは続けてきてよかったなということです。同期や後輩などにずいぶん遅れはとりましたし、まわりにも迷惑もかけましたが、まずは今仕事をしていられることに感謝です。

ジョンズホプキンス病院でのPET/CTマスターコースの打ち上げで参加者と
なぜ続けてこられたんだろうと思うと、やめてはいけないという強迫観念もありましたが、ひとつは最初にいったように診断であれば比較的時間の自由がきいたこと、また、何よりも放射線科というのは歴史が浅いせいか、男性にもリベラルな考え方の方が多く、女性が働くこと、またそれに伴う限界に理解があったように思います。私のまわりには、パートナーも働いていて共同で家事や子育てをしておられる方が古い時代ながらもおられました。そういう方が当直のこととか、子どもの病気のときの対応などにとても協力してくれました。もちろん、困ったこともありましたが、おおむね、他科からきいているよりはよかったように思います。そして、こうして今、働いているわけですが、子育てやら、それに伴う俗世間のことにかかわりあってきたおかげでいいこともたくさんあります。大きなことは、患者さんのことを生活も含めて想像できるようになったことです。放射線診断のように患者さんと直接会うことが少なく、画像と1日中向き合っていると、つい画像の中の病気ばかりに眼がいって、その患者さんのことがみえなくなってしまうのですが、子育てなどしているといろいろな職種の方、いろいろな家族構成、事情を持った方と話す機会があります。そういった方たちとお話しているとひとつの病気でもいろいろな側面や顔を持っていることに気がつきます。診断は正確な病名や病態を説明することが最も大切だとは思いますが、報告書を書くときにそんな患者さんたちを想像することで少しでも治ることに役立つ報告書にしたいという思いがします。そんなふうに考えていると、診断医は画像や依頼医を相手にしているようでありながら、本当にたくさんの患者さんの治療に深くかかわっているのだなあと思います。そうなんですね。放射線科の魅力って、たくさんの患者さんの治療に、たくさんの患者さんの笑顔につながっていることなのではないでしょうか。こんなことがありました。卵巣癌の患者さんで腫瘍マーカーがあがって再発がわからない方がいらっしゃいました。もちろん、再発が疑われますので、画像でわからなくても化学療法をするわけですが、PET検査に来られた患者さんはとても不安そうでした。PETで腹膜播腫がわかり、化学療法の方針は変わらないのですが、患者さんは喜んでくれました。見えない敵と戦うのは不安、わかっている敵はこわくないということのようでした。こんなことがときどきあり、今、ああ、仕事を、放射線科診断を続けてきてよかったなと思うのです。
プロフィール(略)
札幌医科大学卒業後市立札幌病院放射線科レジデントを経て、
北海道大学医学部附属病院放射線科医員、北海道大学医学部核医学講座助手、1992年に北アイルランドロイヤルビクトリア病院にて研究、1997年北海道大学大学院医学研究科講師、2000年同助教授、2004年3月札幌南3条病院放射線科部長、9月より現職
掲載日:2009.06.01
