聖マリアンナ医科大学 栗原 宜子
女性研修医・女性医学生の皆さん、私の選んだ放射線科をご紹介します。
皆さんは、どういった観点で自分が将来携わっていく科を選択されるのでしょう?『これは、私の天職だ!』と迷わず決められる方もいるでしょう。一方、『ずーっと続けていけるのかしら...』と自分の将来像を思い描きながら、あの科?この科?と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。男性医師と違い、結婚・出産を将来の構図に持つ女性医師には科の選択にさらに条件が加わってしまいます。
放射線科は臨床科の中では麻酔科とならび、診療協力部門に分類される領域です。特に放射線診断学・核医学は他の多くの臨床科のような『私は〜先生にいつも見てもらっているのですが...』といった患者との固定したつながりが薄く、日常業務のかなりの部分を占める検査の担当・読影は、『誰でないと』ということがあまりありません。以前の画像と読影レポートを参照し、現在を把握するのです。それは患者と密な関係を築き、診療していくことを自分の医師としてのスタイルと思っている方には満足のいかないものかも知れません。しかし、それだけを科の選択基準にできるわけではないのならば、ある意味、緩い関係であることの方が選択・継続を容易にすると思います。また、『ここにいるこの患者を、今、診察しなければいけない』という完全に時間に拘束された状況でもありません。診断部門では報告書が急ぎ必要なものとそうでないものがあります。『次の外来までに報告書を』もありなのです。このように放射線科には他科と異なる特殊な状況が存在します。
出産後の育児期間、時間的に無理のない施設に移動するのは良い方法です。関連病院など、自分に勤務可能な施設を紹介してもらうと良いと思います。ちょっと回り道になるかも知れませんが、換えられないものもあるでしょう。このように、一時的に step down することになっても、放射線科の有利な点は、患者を診ることでskill up していくのではなく、画像を見ることで level up できるところです。今ではいろいろな学会・研究会から教育のための症例がインターネット上で配信されるようになっており、教科書・学会誌の論文などに加えて多くの情報を積極的に取り入れることができるようになりました。ですから、この期間に実力アップすることさえ可能なのです。
子育てでなくとも、勤務が難しいこともあると思います。放射線科の業務には男女の体力差が影響することはほとんどありませんが、女性が「生む性」であるためにホルモンバランスが体調に大きく影響したり、体力が続かなかったりと、同僚の先生にご迷惑をかけ...いうこともあるでしょう。「頑張れるときにはしっかり頑張る」という自覚のもと、皆からも認めてもらえる状況となっても、やはり継続困難ともなりかねません。そこで完全に諦めてしまうのではあまりにも残念です。
常勤や work sharing も難しい...そんなときでも、IT(情報技術)の発達により仕事を続けることが可能です。放射線科は医療の中でも最もITの恩恵を受けている分野の一つで、自宅でインターネットを介し、読影を行えるのです。いくつかの会社が存在しており、これに登録することで仕事を請け負います。自宅でできるという点、時間の制約が少ない点など自分のスタイルにあったやり方が選べます。遠隔画像診断サービスは始まってまだ十数年しか経過していませんが、放射線専門医が不足している現状ではこの領域をさらに発展・向上させることが必要かつ急務で、これからの開拓は必至です。また、画像のみが転送される遠隔画像診断サービスとは異なり、MRI・CT・PET(核医学)・超音波などの放射線診断機器を保有しながら診療をする画像診断センターも開設されており、このような施設では放射線科医は読影業務のみでなく、対患者の放射線診療にも携わることができます。
このように放射線科医の働き方は幅広く、女性医師の仕事の継続にはとても良い選択と考えます。私は現在、高校生の二児の母で、大学病院の常勤医です。両親との同居でもないので、当然、大変な時期もありましたが、それでもやってこれたのは、医局の先生方、関連病院の方々、保育ママや保育園の先生、夫など多くの暖かい協力があったから、そして私はきっと放射線科だったから(もちろん好きだから続くのでもありますが...)だと思います。それはこれからの女性医師にもぜひ経験して欲しいですし、経験できる環境を存続させたいと思います。
プロフィール(略)
徳島大学医学部卒業後聖マリアンナ医科大学研修医(放射線医学)。その後聖マリアンナ医科大学大学院入学(放射線医学専攻)、大学院卒業は放射線医学教室助手、町田市民病院勤務、米国留学(2年間)、東京厚生年金病院放射線科、2005年に大学に復帰し現在にいたる。
掲載日:2009.06.17
