JCR:日本放射線科専門医会・医会

女性医師が語る放射線腫瘍学の魅力
関西医科大学附属滝井病院放射線科 播磨 洋子

 女性研修医・女性医学生の皆さん、私は放射線科の中でも放射線治療に携わっている放射線腫瘍医ですので、放射線腫瘍学の魅力について述べます。
まず、私の歩んできた道をお話します。私は卒業後最初に精神神経科学教室に入局しました。人間は不思議だなと思って、どうしても学んでみたかったのです。この精神科で学んだ知識は現在、放射線治療の現場で、癌に悩む患者さんに接するのに役立っているのではないかと思っています。3年後に急速に進歩してきました放射線医学に興味をもち、放射線科学教室に入局しました。当時の放射線科教授の田中敬正先生は放射線治療を専門とされていたので、シュライバーとして診察室で勉強させて頂きました。その後、関西医科大学の分院である附属香里病院放射線科に勤務しました。専門化が十分でない時代でしたので、放射線治療、CT、消化管診断、血管造影に従事しておりましたが、なかでも放射線治療に興味を抱くようになりました。この時期は1週間に1度でしたが、大阪府立成人病センターの井上俊彦先生のもとに通い、放射線治療全般、そして、子宮頸癌の腔内照射を教えて頂きました。そのうちに、子宮頸癌の進行・再発症例の治療に苦慮したことがきっかけで、内腸骨動脈化学塞栓術を施行しました。子宮頸癌進行例には放射線治療に動脈化学塞栓術を併用し、また、放射線治療後再発症例には動脈化学塞栓術を施行しました。当直の夜、動脈化学塞栓術を施行した再発子宮頸癌の患者さんが、御主人と病院の廊下の片隅に座って和やかにお話をしておられるのを見て、少しはお役に立てたかなと嬉しく思ったことを今でも思い出します。さらに、平成3年から動脈化学塞栓術のメカニズムを解明する目的で家兎にVX2腫瘍を注入し、子宮癌を作製して検討を始めました。動脈化学塞栓術を施行した家兎子宮癌組織を眺めていましたら、細胞死の1つであるアポトーシスが見られ、とても興味を持ちました。以降、私の研究テーマは臨床の子宮頸癌における放射線治療の予後因子としてのアポトーシス、癌抑制遺伝子、染色体異常、ゲノム解析へと分子生物学研究に進んで行きました。この分子生物学の研究を導いて下さったのは奈良県立医科大学生物学教室教授の大西武雄先生でした。

関西医科大学附属滝井病院放射線科医局員と

関西医科大学附属滝井病院放射線科医局員と。
真ん中の茶色い髪が私です。

 長々と私の研究について述べましたのは、研究の魅力について申し上げたかったからです。少し話はそれますが、私はポリクリの学生に「放射線科の魅力」について、入局後に自分で研究対象臓器を選べる点を挙げます。例えば、耳鼻咽喉科、眼科、婦人科、泌尿器科、脳外科等々、対象臓器は自ずと限られてきます。また、小児科なら当然小児に限られ、婦人科なら当然婦人に限られます。この点、放射線科は入局後でも色々な症例にあたり、自分の興味のある臓器や年代の病気にアタックできる利点があります。私の場合は婦人科、特に放射線治療で約半数が治癒するIIIB期の子宮頸癌でした。目で見て触って画像を見て、非常に分かりやすい癌だと思いました。その反面、分子生物学で研究を重ねてきますと、この癌の奥深さに驚かされ、ますます魅かれていきました。放射線腫瘍医の醍醐味は治癒が困難そうな癌が治って、元気に通院してきて頂くことです。放射線治療の利点は何と言っても形態・機能の温存につきます。しかし、最大の欠点は放射線感受性が個々の癌によって異なることです。腫瘍の大きさも組織もそんなに変わらないのに、何故放射線治療で治る癌と、治らない癌があるのだろうか、もっと多くの患者さんを治せないものだろうかというのが射線腫瘍学を始めて以来の私の研究の源であり、続けてきた理由です。

 私は若い女性研修医・女性医学生の皆さんに、面白くて仕方がないという研究テーマをいつか見つけて頂きたいと思います。はじめに述べましたように私は最初精神科に入局し、放射線科に改めて入局しましたので、決して最初から道筋が引かれていた訳ではありません。これまで私を導いて下さった諸先生方、助けて頂いた諸先輩や同僚、家族には心から感謝しています。

 私には子供が2人いますので、仕事と家庭との狭間で、子育てもそれなりに大変でした。しかし、2人とも大分以前に成人し、今となれば楽しかった思い出ばかりです。子供が小さいときは日々の生活の中で時間のやりくりが大変ですが、子供は成長するのですから、そんなに長く続くものではありません。今、幼い子供さんを育てている最中の方がおられたら、無我夢中でしょうが、子供がこんなに可愛い時期は今しかないのだから、精一杯楽しむ気持ちになられたらと思います。とは言うものの、子供は成人したらしたで、幼い頃と異なった面で、心配の種は尽きないとういうのが本音ですが・・・。

 せっかく医学に接する機会を与えられたのですから、仕事を辞めずに続けることが大切です。女性研修医・女性医学生の皆さん、これから様々な壁にぶち当たることもあるかもしれませんが、どうぞ肩を張らずに、柔軟な気持ちを持って、そして道はきっと開けると信じて、諦めずに頑張って下さい。

プロフィール(略)
関西医科大学卒業後、関西医科大学精神神経科研修医。関西医科大学放射線科に入局後、1980年助手。関西医科大学附属香里病院放射線科に出向。本院に帰向後、1995年講師、2000年准教授。2006年関西医科大学附属滝井病院放射線科部長。現在に至る。

掲載日:2009.11.11

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